伺ったのは、電話を「かける」という時の表記についてです。
「架ける」が4分の1超す
電話を「かける」、どう書きますか? |
電話を掛ける 15.1% |
電話を架ける 28.1% |
電話をかける 56.8% |
平仮名書きが多いだろうと予想していましたが、「架」を使うと答えた人が4分の1を超えたのは意外でした。「電話をかける」という意味の「架電」が浸透していることがうかがえます。
「架電」がよく使われるようになったのは最近のことのようです。「広辞苑」でも第5版(1998年)までは載っておらず、第6版(2008年)で採録されました。元々は裁判の判決文などに出てくる用語だったようで、1991年6月18日の毎日新聞には、裁判所内で「『電話をかける』を『架電する』と表現した判決文が難しすぎる」と論議を呼んだと記されています。
そうした難解な裁判用語を易しくする動きがある――と記事は紹介しているのですが、「架電」はむしろ定着した観があります。しかしそれを「架ける」とまで応用するのはどうでしょうか。
文化審議会国語分科会が2014年に出した報告「『異字同訓』の漢字の使い分け例」では、「架かる、架ける」について「一方から他方へ差し渡す」と解説し、用例として「橋が架かる。ケーブルが架かる。鉄橋を架ける。電線を架ける」を挙げています。
「電話を架ける」は電気信号をつなぎ渡すようなイメージかもしれませんが、ちょっと無理があるように思います。
(2018年02月11日)
辞書にある「架電」の項目には「電話をかけること」(広辞苑第7版)との説明がありますが、「電話を架ける」という表記は一般的でないようです。毎日新聞では用字を定めてはいませんが、記事データベースで検索できる範囲では「架ける」14件、「掛ける」1582件、「かける」1万5093件と仮名書きが圧倒的(1月21日時点)。共同通信社の用語集では、慣用が定着しているものとして「かける」を使うこととしています。
(2018年01月26日)