11月5日の投開票に向け、米大統領選の記事が増えています。「過去8回の大統領選で共和党候補が一般投票の得票率で民主党候補を上回ったのは1回だけ」など、調査が大変そうな原稿に出くわすことも。今回は毎日新聞の記事を交え、調査に役立つサイトをご紹介します。
11月5日に投開票される米大統領選。共和党は7月、民主党は8月に党大会があり、各党の候補者が決まるとさらに論戦が本格化していきます。だんだん大統領選に関する記事も増え、「過去8回の大統領選で共和党候補が一般投票の得票率で民主党候補を上回ったのは1回しかない」など、一見調べるのが大変そうな原稿に出くわすこともしばしば。そこで今回は実際の毎日新聞の記事を交え、調べものに役立つサイトをご紹介します。
目次
「最も得票率が高かった州」を調べる
ワイオミング州は2020年大統領選でトランプ氏の得票率が全米で最も高かった州。
(2022年8月18日朝刊)
前回2020年の大統領選の結果については、米CNNのサイトが有用です。
州ごとの得票数と得票率、獲得選挙人数などが見られます。地図上で各州にカーソルを合わせるだけで情報が一覧できるので便利です。
地図左の「Maps」から「Size of Lead」を選ぶと、得票率の差が大きな州ほど色が濃く表示されるようになります。今回は濃い赤のところを順に見ていくと、ワイオミング州(WY=Wyoming)が得票率69.9%で最も高いとわかります。
州ごとの歴代勝者を調べる
1980年代以降の大統領選で民主党候補がノースカロライナ州を制したのは、2008年のオバマ氏だけだが、前回のトランプ氏とバイデン氏の得票率の差はわずか約1.3ポイントだった。
(2024年4月12日朝刊)
270 to Winという米大統領選に特化したサイトでは、直近の結果だけでなく歴代の結果、さらに一つの州にしぼって詳しい結果を一覧できます。
今回はノースカロライナ州の結果を調べたいため、「Historical Presidential Election Information by State」からノースカロライナ州を選んで見てみます。
まず「1980年代以降の大統領選で民主党候補がノースカロライナ州を制したのは、2008年のオバマ氏だけ」については、「Presidential Voting History」「Electoral College Votes」を見てみます。
「Presidential Voting History」は過去12回分についてどの政党の候補者が勝利しているかがわかります。「Electoral College Votes」では、その州での投票が初めて行われた年から直近までのすべての年について、どの政党の誰が勝利し、選挙人を何人獲得したのかが見られます。
1980年以降で民主党(Democratic)が勝利しているのは2008年のみであり、そのときの候補者はオバマ氏であることが確認できます。
「前回のトランプ氏とバイデン氏の得票率の差はわずか約1.3ポイントだった」については、「Recent Presidential Elections」を見てみます。過去6回分または12回分について、2大政党の得票率が確認できます。
民主党(青)のバイデン氏は48.6%、共和党(赤)のトランプ氏は49.9%の得票率だとわかり、差し引くと1.3になりました。
こちらについては先述したCNNのサイトでも同じ結果が見られます。
「州の歴代勝者が大統領になったか」を調べる
オハイオ州で勝った候補者は1964年以降、13回連続で大統領になっています。
(2016年10月12日朝刊)
2016年大統領選の直前の記事で少し古いものですが、確認作業が大変そうな一文です。これについては、270 to Winの「State Electoral Vote History」が有用です。
各州で勝利した政党とその州の選挙人数が見られるのですが、1900年以降のすべての年と州について1ページで一覧できるようになっています。
下の説明に緑の線とともに「Line: State voted with election winner」とあります。その州で勝利した候補が大統領になった場合、緑の線を引いている、ということです。
オハイオ州について1964年以降13回分の結果を見てみると、すべてに緑の線が引かれています。前述の一文は正しいと確認できました。
過去の2大政党候補者の得票率を調べる
過去8回の大統領選で共和党候補が一般投票の得票率で民主党候補を上回ったのは1回しかない。
(2023年2月3日朝刊)
270 to Winの「Historical Timeline」では、各年の結果を地図で一覧できます。
「Popular Votes」が得票数なので、多い方が得票率が高いことになります。
過去8回分(1992~2020年)について各年確認してみると、共和党候補の得票数が民主党候補を上回っていたのは2004年のブッシュ氏のみでした。
これについては、ブリタニカの「United States Presidential Election Results」でも確認できます。各年の結果が年表のようなかたちで1ページにまとめられているサイトです。
「popular percentage」が得票率なので、こちらを順に見ていけばOKです。
このサイトは年を選ぶと候補者選びなどの情報についても見ることができます(2024年7月現在、2020年については未作成のようです)。
日本でなく外国の話題となると、日本語では検索しても出てこなかったりと、格段に調べるのが難しくなります。今回紹介したサイトも英語ばかりですが、視覚的にわかりやすく使いやすいものばかりだと思います。校閲は日々このようなサイトを駆使しながら原稿の正確性を担保しています。みなさんにとってもなにかお役に立てたら幸いです。
毎日ことばplusでは「調べものリンク集」として、今回ご紹介したような原稿内容の調査に使えるサイトをまとめたページを公開しています。ご活用ください。
【加藤史織】