「2024年の冬」といった場合に、具体的にいつを指すものと受け取るかを伺いました。
目次
3分の1は「はっきりせず困る」
「2024年の冬」といったらいつを指しますか? |
2024年の12月からの時期 48.8% |
2024年の1、2月ごろの時期 16.8% |
上二つのいずれかはっきりせず困る 34.4% |
「2024年の冬」といった場合、いつを指すものと受け止めるかは「2024年の12月からの時期」とした人が最も多く、半分近くを占めました。「1、2月ごろ」とした人は2割に届かず。ただし、「いずれかはっきりせず困る」とした人も全体の3分の1を占めており、受け手に余計なストレスを与える表現と言えそうです。
「冬」の区分もいろいろですが…
「冬」とは一年のどの時期を指す言葉か。いくつかの基準がありますが、立冬~立春▽新暦の12月~翌年2月▽旧暦の10~12月▽冬至~春分――といった区分が主に考えられます。
太陽の位置を基に定める二十四節気では立冬(11月初め)から立春(2月初め)までが冬。旧暦では10月から12月(新暦換算では2024年の場合11月1日~25年1月28日)が冬、気象庁では新暦の12月~翌年2月を冬と呼んでおり、天文学では冬至から春分までを冬とされます。校閲のX(ツイッター)には、テレビドラマの区切りとしては1~3月クールが冬とされると紹介するポストがつきました。
旧暦のように10~12月を冬と見なすならば「2024年の冬」と言ったとしても、なんら問題は起きません。年またぎが起きないからです。古代中国の発想では、一年は「青春→朱夏→白秋→玄冬」のサイクルで巡ります。これは人の生涯にも対応するもので、生命のもえいずる青春から始まって、ものみな枯れ果てる玄冬に至って人生を閉じることになるわけです。であれば冬は一年の終わりでなければなじみません。
新聞の「冬」は年またぎ
ただし、新聞では基本的に気象庁の区分に従って「12月~翌年2月」を冬としています。気象のニュースがかなりの頻度で掲載されることも理由の一つでしょう。NHKでも同様とのこと(放送での四季(春夏秋冬)の区分は?)。今回の質問は、この区分を前提とした上で、「2024年の冬」と記事に書いた場合、どう受け止められるかを伺いました。
結果としては「2024年の12月から」と受け止める人が最多でしたが、「はっきりせず困る」という人も3分の1に達したことを考えると、メディアで使う言い回しとしては、あまりうまくないものと言わざるを得ません。誤りではないとしても、情報がストレートに伝わらないということになるからです。
毎日新聞の記事データベースで「(20)21年冬」「~年の冬」を含む記事を検索してみると、十数件見つかったうち、大半は2021年の終わりごろを指すものでしたが、記事を読んだだけでは決めかねるものも数件ありました。当該部分が記事の本旨に関わるものでないとしても、問題なしとは言えません。
戸惑わせない書き方は
「~年の冬」で時期に関して戸惑いが生じるならば、「冬」は使わずに「~年の終わりにかけ」「~年の終わりごろ」「~年の初め」などとする書き換えを考慮すべきだと考えます。一方で、例えば「今年の冬」なら「今冬」「この冬」、既に冬になっているなら「今季」といった書き方ができます。あるいはフィギュアスケートのシーズンのように「2023~24年」などと、ちょっと面倒ですが、年をまたぐことを明示するのがよいでしょう。
(2023年11月06日)
校閲職場の同僚から、記事中の「2024年冬の開業を目指す」というくだりについてどう思うか聞かれました。その年の12月あたりからの開業じゃないか、と答えると「みんなそう受け取ってくれればいいんだけどねえ」と思案げな様子。確かに現在は「冬」といったら12月~翌年2月の時期を指すことが多いので、24年の冬といった場合に1、2月ごろかと考える人もいるかもしれません。
本来、一年は春夏秋冬の順で巡り、冬は年の終わりの時期になります。二十四節気でいえば新暦で2月初めの立春からが春になります。ただし、今でも正月には「迎春」「新春」といった言葉が使われますが、旧暦では正月(立春の前後15日ほどの範囲に収まるようになっている)を迎えると春だと意識されていました。
そんなわけで暦の感覚としては「冬」といえば「その年の終わりごろ」になるのですが、記者がどう意識して書いたのかは今一つはっきりしません。当該の記事の場合は12月ということのようでしたが、受け止め方によっては1年近く時期がずれるかもしれないと思うとモヤモヤは残ります。皆さんはどのように受け止めるでしょうか。
(2023年10月23日)