1985年公開のSF映画の名作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future)。主人公の少年が近所に住む老博士が発明した車に乗りタイムトラベルをする話だが、最初に題名を聞いた時は「未来へ戻れ」という意味が分かりづらかった。過去へ戻れなら分かるが、未来へ戻れとは? だが、映画を見終わってからは「なんと考え抜かれた題名か」と感心した。
一方で、音楽業界で「●●フィーチャリング▲▲」という表記がある。●●というアーティストの楽曲に▲▲が参加して演奏するような場合に使う。フィーチャリング(featuring)の元になるフィーチャー(feature)には「目玉商品」という意味もあり、アーティストが他の大物アーティストに協力を呼びかける場合にこうした表記が使われているようだ。
新聞の紙面は内容的にニュース面と特集面に分かれ、ニュース面は、読者から見て前日や当日に起きた情報を知らせる面であり、特集面は必ずしも当日の出来事にこだわらず、特定のテーマについて調べ上げた情報を掲載するページだ。毎日新聞の社内では「特集面」という名称を使いながら、必要に応じて「フィーチャー面」と呼ぶこともある。フィーチャーにはもともと「特集記事」という意味もあるからだ。
ところが、これをうっかり「フューチャー面」と言う関係者が多いのである。当日の出来事にこだわらないと書いたように、特集面は掲載日当日のニュースを入れるわけではないので、掲載の数日前、数週間前から制作を始めることが多い。おそらく、だいぶ先に掲載される面(未来の面)ということで、「フューチャー」と思うらしい。
「フューチャー」も「フィーチャー」も、日常会話で頻繁に使うようなものではないから、いざ使おうとすると、SF映画のインパクトからか「未来」のイメージが先行するのかもしれない。社内の資料や発言で「フューチャー面」に接すると、内心「フィーチャーだけどね」と思いながら、粛々と決定事項に従うのは校閲記者のさがとも言えるだろう。
【岡本隆一】