時期が早いことを「最速」と表現することについて伺いました。
目次
7割は「最速」を認めず
観測史上「最速の」猛暑日――この言い方、どうですか? |
問題ない 10.4% |
違和感はあるが、他に言葉がなく仕方がない 20.6% |
「最速の」を使うべきではない。「最も早い」としか言えない 69% |
時期が早いことについて「最速」という言葉を使ってもよいかという問いに、「問題ない」と答えた人は1割程度にとどまり、7割近くが「最速」は使うべきではないと回答しました。しかし、それでは他にどのような言葉を使うかというと、なかなか難しいところがあります。
「速度がはやいこと」が「最速」
「最速」の国語辞典の説明は「あるもののなかで、最も速いこと。『日本の短距離界で最速を誇るランナー』」(大辞泉2版)のようなものが普通です。ここからは、「時期が早い」という意味を感じ取ることはできません。
例外的に三省堂国語辞典(8版)が、「速度がいちばんはやいこと」に加えて「時期がいちばんはやいこと。『リーグ最速で百安打に到達』」という説明と用例を載せています。新しい言葉や用法を積極的に取り入れる三省堂国語辞典ならではと言えそうです。
梅雨明けにも使われたが…
しかし「最速で百安打に到達」という例は、一定の数字に達するための所要期間の短さを競うものとも言えます。時間あたりの仕事量が関係するという点では速度に近い部分があり、質問文のような例とはまた少し違うようにも見えます。要するに、質問文の場合の方が、よりなじまない使い方と考えられるということです。
今年の夏は梅雨明けが早かったことが話題になりましたが、毎日新聞でも「最速の梅雨明け」という言い方が使われていました。特に見出しでは、文字を少なくする漢語の形が好まれるため頻出。校閲から指摘して直すことができた場合もあれば、そうでない場合もありました。もしかすると、梅雨が走って通り過ぎていくようなイメージで見出しを付けているのかもしれませんが……。
やはり「最速」を使うのは避けたい
アンケートの結果、7割という多数が「最速」は使えないとしたことから見ても、「最速の真夏日」のような使い方は避けたいと考えます。ただ、これを「最も早い」以外の言い方、特に漢語にしようとすると難しいと感じます。
三省堂国語辞典は、時期が早いことの「最速」の対語として、「〔俗に〕最遅(さいおそ)」という語を挙げており、この方式なら最も早いことは「最早(さいはや)」となるのが良いのではないかと思いましたが……「最早」は「もはや」と読まれてしまいそうです。結局のところ「最速」も「最早」も使いにくく、時期が早いことについてパッと言い表す言葉というのは、現状では見当たらないようです。
(2022年07月28日)
6月中に猛暑が到来し、梅雨もどんどん明けていくという異例の夏に戸惑う人も多そうですが、そうした戸惑いが言葉の上にも表れるのかもしれません。NHKのニュースのテロップに「最速の猛暑日」という文言を見かけて「ん?」と思いました。▲ニュースの中身は「東京都心で観測史上最も早い猛暑日を迎えた」というもので、この内容に首をかしげたわけではありません。「最速」という言葉が引っかかったのです。この言葉を「時期が早い」という意味で使うのはどうなのでしょうか。▲これまでも例えば「大谷が日本選手最速の100号本塁打」のように、時間的な要素を持つ文脈で「最速」を使うことはありました。ただし、こうした例では「時間あたりの記録の進み具合」が大きいという点で速さと類似していると考えれば、受け入れることもできそうです。しかし単純に「時期が早い」という意味で「最速」を使うのは抵抗があります。▲とはいえ、その後も「最速の梅雨明け」のような形を見かけたこともあり、こうした使い方は思いのほか浸透しているのかもしれないと感じました。皆さんはどう感じるでしょうか。
(2022年07月11日)