読めますか? テーマは〈上下関係〉です。
目次
弑逆
しいぎゃく
(正解率 69%)「しぎゃく」の慣用読み。主君や父を殺すこと。明智光秀が織田信長を討ったようなこと。「弑逆であれ簒奪(さんだつ)であれ、堂々天下のぬしになり、民を慰撫(いぶ)し、泰平をひらかるべきでありましょう」というのは司馬遼太郎「国盗り物語」の本能寺の変直前のせりふだ。今年は司馬さん没後20年。
(2016年02月15日)
選択肢と回答割合
しきぎゃく | 20% |
しいぎゃく | 69% |
さつげき | 11% |
下種
げす
(正解率 69%)「下衆」「下司」とも書く。品性の下劣なことや人。また、身分の低い人。「げしゅ」と読めば、仏が衆生に仏になる可能性を与えるという意味の仏教語となる。「下種(げす)も三食(さんじき)上臈(じょうろう)も三食」は、やっていることによっては身分の高低は関係ないことをいうことわざ。
(2016年02月16日)
選択肢と回答割合
かしゅ | 12% |
げす | 69% |
しもぐさ | 19% |
直参
じきさん
(正解率 89%)主君に直接仕えること。またはその家臣。江戸時代には将軍直属の旗本・御家人の総称。現代は「山口組直参」のように暴力団関係で用いられることがある。
(2016年02月17日)
選択肢と回答割合
ちょくさん | 6% |
じきさん | 89% |
じかさん | 6% |
股肱の臣
ここうのしん
(正解率 75%)最も信頼できる家臣・部下。手足となって働く家来を表す。漢字の本来の意味としては、股は「また」というよりは「もも」、肱は「ひじ」というよりは「上腕」を表した。
(2016年02月18日)
選択肢と回答割合
はんこうのしん | 6% |
ここうのしん | 75% |
しこうのしん | 19% |
麾下
きか
(正解率 61%)将軍直属の家来。また、広く部下の意味。同音の「旗下」もほぼ同じ意味。「麾」は手で合図して人を呼び寄せる意味の字。「日本の総帥は源平、戦国のむかしから象徴性が高く、半神的印象を麾下の将兵にあたえる」(司馬遼太郎「坂の上の雲」)
(2016年02月19日)
選択肢と回答割合
きか | 61% |
ひげ | 15% |
げいか | 24% |
◇結果とテーマの解説
(2016年02月28日)
織田信長廟(京都本能寺)Photo by PlusMinus
この週は「上下関係」。漠然としたテーマですが、元々のきっかけはNHK大河ドラマ「真田丸」で本能寺の変のシーンを見て「弑逆」という漢字が思い出されたことでした。
今年が司馬遼太郎没後20年ということもあり、その作品から引用できないかと思いつつ「新潮日本語漢字辞典」を引くと、まさに「国盗り物語」が用例に挙げられていました。
要するに光秀はこの一挙をなんとか正当づけ、弑逆による悪名から自分をのがれさせたい一念なのであろう。
国語辞典では「弑逆」はたいてい「しぎゃく」の慣用読みとされており引き直さなければなりません。しかし「国盗り物語」にも「しいぎゃく」とあるように、現在は慣用読みの方が一般的ではないでしょうか。とすると「しいぎゃく」から引ける辞書の方が便利だと思います。
「下種」は週刊誌などの見出しに最近やたらと多い文言から。講談社の「暮らしのことば語源辞典」にはこうあります。
身分の高い人の意の「上衆(じょうじゅ)」の対語として使われた語で、「下衆」の文字を当てるのが本来である。やがて、身分の低さにとどまらず、「下種の知恵は後から」「下種の勘繰り」など、心の卑しさにも用いられるようになった。
「直参」は今回最も正解率が高くなりました。「江戸時代、将軍に直接仕えた一万石以下の武士。旗本や御家人を指す」(角川必携国語辞典)という歴史用語ですが、最近多いのが暴力団関係での用例です。「直系団体」という意味のようです。
「股肱の臣」の肱は常用漢字ではありませんが、股は2010年に常用漢字に追加されました。「股間」のようによく使われる言葉ではない場合「こ」という読みが分かるかどうか調べようと、「肱」の読みは正しい選択肢を用意しました。結果、4人に1人が読めませんでした。
「麾下」は今回最も低い正解率。たぶん「坂の上の雲」に出てくるのではないかとパラパラめくっていて見つけました。出題者がこの言葉を覚えたのは田中芳樹「銀河英雄伝説」からだったような気がしますが、定かではありません。そういえば「弑逆」出題時に「アルスラーン戦記」で覚えたというツイッターの反応がありましたが、これも田中芳樹さんの小説です。
なお、 昨年の司馬作品の販売部数のデータが毎日新聞ニュースサイトに紹介されています。
面白いのは、それほどメジャーではないと思われる「城塞」が「世に棲む日日」の次に人気となったことです。「世に棲む日日」は吉田松陰がらみで大河ドラマ「花燃ゆ」の効果と分かりますが、「城塞」はどういうことでしょう。真田幸村が活躍するので、これも大河ドラマの影響でしょうか。それとも大坂夏の陣から400年というタイミングによるものでしょうか。いずれにせよ、この機会に「風神の門」「関ケ原」「城塞」と、真田幸村が出る司馬さんの小説を読み進めていくのもよいでしょう。