しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートからまとめました。(調査について詳しくはこちらの①をご覧ください)
目次
先延ばす
直す=20社 |
直さない=0社 |
「直す」で全社が一致した。直し方の例は「先延ばしする」「延ばす」「先送りする」「延期する」など。「普通は名詞で使う言葉を無理やり動詞にするケース」「動詞化には抵抗がある」などの指摘があった。
また、「このような、名詞を勝手に動詞化する傾向が目立つ。最近気付いた例としては『ひた隠す』『わしづかむ』『飼い殺す』『照れ笑う』『弾き語る』など。それぞれ『ひた隠しにする』『わしづかみにする』……などと直している」というコメントもあった。
快腕
直す=13社 |
直さない=7社 |
「直す」が6割以上となった。「怪腕」「豪(剛)腕」などに直すという意見のほか、「快」を生かして「快投し」などにしたいという声も。「『豪(剛)腕がうなり』と『快投し』が混同した表現だろう」という指摘もあった。また「快腕」という言葉字体は否定せず、「『○○の快腕』などの形では使うが、例のようなケースでは使わない」という声が複数あった。
「直さない」では、「スポーツ記事では雰囲気が大事」「スポーツ面ではこの字がしっくりくる」などとあえて許容するという意見のほか、「漢字の組み合わせとしてはありうる」「『怪腕』の『すぐれた腕前』という意味と、ここで表現したい意味は違うと思うので、単純に『怪』にはできない」などの指摘があった。スポーツ紙で「直さない」は3社のうち1社だった。
タイムリーエラー
直す=5.5社 |
直さない=14.5社 |
7割以上が「直さない」とした。理由は「和製英語ではあるが定着している」「辞書にも採用されている。攻撃側から見た場合なら、より当てはまりそう」など。また「スポーツ紙では頻出」「状況がわかりやすい表現」などとして、スポーツ紙は3社とも「直さない」だった。
「直す」とする意見は少数派だったが、「失点につながるエラー」「エラー」「適時失策」などが直し方として挙がった。同時に「直さない」派も含め、この例文では「『大事な場面で』と状況説明はできているので、単に「エラー」だけでもいいのではないか」との声も少なからずあった。
箸を進めていた
直す=13社 |
直さない=7社 |
「直す」とする意見が多かった。「『箸が進む』で慣用句であり、『食が進む』を『食を進めていた』と言わないのと同様で、抵抗感がある」「自発的な行動なので」「動作の描写に使う表現ではない」などの理由を挙げ、「箸が進んでいた」「食べていた」などを直し方の例とした。
許容できるとする声では、「複数の料理に次へ次へと『箸』を『進める』ので」「『箸が進む』の変化形と解釈。意味も通じる」「意志を伴う『進める』は『次々と食べる』意味にはなる」など文字通りの表現として成立しうることを理由とした。ただ同時に「『箸が進む』には、意識せずとも自然と食が進んでしまうほどおいしいという感じがある。おいしくてそうなっているという意味は伝わりづらい気はする」との付記もあった。