読めますか? テーマは〈建物と工事〉です。
目次
普請
ふしん
(正解率 80%)土木・建築の工事。元は広く人々にお願いして寺の建造などに携わってもらう意味の仏教用語だった。今は「安普請」という形で主に使う。
(2016年09月26日)
選択肢と回答割合
ふせい | 15% |
ふしょう | 6% |
ふしん | 80% |
梲
うだつ
(正解率 70%)「卯建」とも書く。「うだち」とも読む。はりの上に立て棟木を支える短い柱。江戸時代には建物の両側に張り出した防火・装飾のための小屋根付きの壁をいうようになった。「うだつが上がらない」の語源として知られる。
(2016年09月27日)
選択肢と回答割合
もぬけ | 25% |
うだつ | 70% |
ぜい | 5% |
三和土
たたき
(正解率 79%)「たたき土」の略。もとは赤土、石灰、砂利などににがりを加えて混ぜ固めた土間。現代では主にコンクリートのものをいう。「叩き」または「敲き」が本来の漢字で「三和土」は当て字。
(2016年09月28日)
選択肢と回答割合
せめんと | 14% |
さわど | 7% |
たたき | 79% |
伏魔殿
ふくまでん
(正解率 82%)魔物の潜む殿堂ということから、陰謀や悪事が企てられる場所をいう。石原慎太郎元東京都知事は豊洲市場の建物の下が空洞になった経緯について「都庁は伏魔殿」と述べた。
(2016年09月29日)
選択肢と回答割合
ふくまでん | 82% |
ふしまでん | 15% |
ふせまでん | 3% |
一簣
いっき
(正解率 27%)簣とは土を運ぶ入れ物で、一簣はわずかなことの例え。ことわざ「九仞(きゅうじん)の功を一簣に虧(か)く」は、高い山を造るような大事業が最後の土盛りという仕上げを怠ったために完成に至らないことから、事が成就する直前に少しの油断で失敗することを表す。豊洲市場は建物下の盛り土が欠けた。
(2016年09月30日)
選択肢と回答割合
いっき | 27% |
いっす | 36% |
いっせき | 37% |
◇結果とテーマの解説
(2016年10月09日)
この週は「建物と工事」がテーマ。連日報道される豊洲市場の「盛り土」問題がきっかけであることはお分かりだと思います。
梲が上がる街並み by Jiroh
新聞では「盛り土」に普通ルビは振りませんが、先日ニュースを分かりやすく解説する記事で例外的に「盛(も)り土(ど)」と振ったところ、「もりつち」ではないかと複数の読者から電話があったとのことです。「大辞林」のように「もりつち」に「もりど」も併記している辞書もありますが、「もりつち」しか載せていないものも少なからずありますので、もっともな疑問です。ただし土木関係の一種の業界用語としては「もりど」の方が通用している実態があります。このニュースの盛り土は土木工事関係そのものですので、テレビでも「もりど」と読んでいるようです。
さて、9月のある日、ネットで検索数急上昇のワードとして「伏魔殿」があるのを見たとき、どうして今?と不思議でした。毎日新聞では当初書かれていなかったので分からなかったのですが、石原慎太郎元知事が「都庁は伏魔殿」と発言したからだったのです。
伏魔殿という言葉を聞いて思い出すのは、田中真紀子さんです。2001年の外相時代、外務省官僚との衝突のさなか「外務省は伏魔殿のようなところ」と発言しました。その時ほど石原さんの発言が話題になっていないのは不思議ですが、政治家(石原さんは元政治家というべきかもしれませんが)が、自分のコントロールできない事務方を評するのに使った点で共通します。そして今回の場合は、知られざる地下空間という舞台がいかにも「伏魔」という字にぴったりです。
伏魔殿という言葉は「水滸伝」に出てきます。東京(とうけい)の司令官が「伏魔之殿」という額のかかった建物の封印を、周りが止めるのも聞かず解き、石板の下を掘らせると「万丈深浅の地穴なり」。そこから108の魔王が飛び出していったのです。日本の東京都の場合、豊洲市場の地下にはベンゼンという「伏魔」があることを職員はどう考えていたのでしょう。
さて正解率を見ると「伏魔殿」がこの週で最も高いのですが、82%という微妙な数字です。アクセス数もこの5語の中で最も多く、たぶん「ふくまでん」が正解と思いつつ念のため確認しようという参加者が多かったのかもしれません。
「普請」の請をシンと読むのは鎌倉時代ごろからみられる「唐音」という読みで、普請はもと禅宗の用語ですので、鎌倉時代が生んだ読み方と言えるでしょう。
「梲」は相当な難読語と思っていましたが、正解率7割というのは大したものです。「うだつの上がらない」という慣用句の語源は建築用語だということは案外知られているのでしょうか。
「三和土」に関して、最近「万里の長城」の補修がコンクリートで固めただけで景観を台無しにしたというニュースがありましたが、いやあれはコンクリートではなく伝統的な三和土であり雑な工事ではないという趣旨の反論があり、ネットで話題になっています。豊洲市場に関しても、決定過程はともかく地下に空洞があることそのものは当然とする意見もあります。どうも土木の話は専門的で分からないことが多すぎます。
「一簣」は「九仞(きゅうじん)の功を一簣に虧(か)く」ということわざが、盛り土を欠いたため移転が成就しない市場を連想させたことからの出題ですが、この週で最も正解率が低くなりました。簣というのは日本では「もっこ」のことですが、もっこという言葉も今ではほとんど使われません。しかしこの古風なことわざは今も好む人がいます。出典は「書経」で、「楽しく使える故事熟語」(文春文庫)から引用すると、
周の文王の子である召公が、周王朝を創設した兄の武王に「朝夕の努力を続け、ささいなことでも慎まないと、大きな徳を損なうことになる。九仞の山を造るのに、あと一簣のところでやめれば、山は完成しない」と諌(いさ)めた。
とのこと。このように上司をいさめる部下がいると、豊洲市場もこんなに大問題にならなかったかもしれませんね。