「肌寒い」という言葉の使い方について伺いました。
目次
回答は三分も、6割超が「違和感」認める
冬用のダウンを着ても「肌寒い」――違和感ありますか? |
違和感があり、直したい 29.6% |
違和感はあるが、許容範囲 33.9% |
違和感はない 36.5% |
かなり割れる結果となりました。選択肢の中では「違和感はない」がやや優勢でしたが、大きなくくりでは6割の方が「違和感がある」ということだったので安心しました。それにしても、事前の予想通り「許容範囲」との声がかなりありました。実際にダウンを着ても、くるまれている体自体が寒いというのは体感としてわかります。許容範囲とした方はそういったご自身の体験をもとに答えてくださったのかな、と思います。
「肌寒」は皮膚感覚の伝わる秋の季語
「肌寒(はださむ)」は秋の季語で、NHK放送文化研究所ウェブサイトのQ&Aでは、「『肌寒い』は秋だけ?」という質問に対し「必ずしもそうとはいえないが春先などに使うと抵抗感をもつ人も」と回答しています。ダウンを着るような寒さの時期にはあまり使わないと言うこともできるでしょう。
また、角川俳句大歳時記の解説には「『肌寒』は直接肌に感じる寒さであり、皮膚感覚を生かした語である」とあります。なおここには「新古今集」などの作例が掲載されており、かなり昔から「秋ごろ」の寒さに使われてきた言葉だということがわかります。
季節感生かして使いたい
一方、「肌寒い」には「薄気味悪くて、また、さみしくて寒気を感じる」(広辞苑7版)という意味もあります。出題者はこの意味で使ったことがないのですが、言い換えると「ぞっとする」に近い感覚なのかなと思います。ぞっとする感覚は自身の内側から湧き上がるもので、この比喩表現になじみのある人は「皮膚感覚」にこだわらずに捉えていたという見方もできそうです。
一般的に使用する分には、皮膚感覚に限らず「少し寒いな」というシチュエーションで使っても通じる用法だと感じました。しかし、新聞では「本来の用法」を大切にするという観点から、できれば直した方がよさそうです。
秋がどんどん短くなる昨今(今年の東京はほとんどありませんでしたね)、秋の季語と聞くとなかなか使える期間が短いという印象を受けます。しかし、季節を感じるという意味では「肌寒い」にも独特の使用感があると思います。質問のようなケースでは直すことを考えますが、風の冷たさにふと驚かされることもあるこのごろ。使える場面では積極的に使ってみてはいかがでしょうか。
(2020年10月30日)
今年は暑い日が長く続いたので夏気分が抜けず、まだ七分袖などを着ています。しかしさすがに夜などは肌寒さを感じるようになってきました。
この「肌寒い」ですが、辞書を引くと「肌に冷たさを感じる」(明鏡国語辞典2版)、「肌の露出している部分が、空気の冷たさを感じる状態」(新明解国語辞典7版)など、言葉どおり「肌」で実際にどう感じたかを表す言葉とされています。
ダウンを着ていても顔は出ていますが、そうすると「冬用のダウンを着ても」が意味を無くしてしまうような……? そのままでもいいかなあとためらったのですが、結局「寒さを感じる」と直しました。許容範囲との声も多いのではと予想していますが、いかがでしょうか。
(2020年10月12日)