
「代替チョコ」の「代替」の読み方について、「だいたい」か「だいがえ」か尋ねました。
目次
「だいたい」が圧倒的
| 「代替」チョコ――カギカッコの中はどう読みますか |
| だいたい 84.7% |
| だいがえ 4.2% |
| 上のどちらも言う 11.1% |
この質問をしたきっかけは、芸人で日本語学者のサンキュータツオさんが「サンデー毎日」のコラムで「代替チョコ」を取り上げたことです。カカオの高騰でヒマワリの種やゴボウなどで代替する品が台頭していることを踏まえ、代替チョコの読み方を問います。
「代替品」と書くと「だいたいひん」と読みがちだが、「代替の品」と「の」を入れると「だいがえのしな」と読みがち。なにこの現象。いままさに時代の転換点、ひゃほーい!と静かに興奮しているのは日本語学者くらいだろうか。
こうした変化は最初に「誤用」と言われていたような後発の表現が優勢となり、最終的にそれしかなくなるというのが流れなので、いずれ「代替」は「だいがえ」オンリーになるだろう。「情緒」が「じょうしょ」から「じょうちょ」になったように。
そこで早速アンケートしてみたのですが、あにはからんや「だいたい」が圧倒的でした。ただし「どちらも言う」も合わせると「だいがえ」は約15%と、切り捨ててよい存在とはいえないかもしれません。そもそもこの「質問ことば」の回答者はもともと言葉に関心がある方が多いと思われます。だから無作為のアンケートだと「だいがえ」がもっと多くなった可能性は考えられます。
戦後の混乱期に「代がえ」の見出しも
新聞などの文字媒体で「代替」は普通、ルビが振られません。だから読み方は読者次第ということになるのですが、新聞の原則としては「代替」は「だいたい」と決まっています。仮に「だいがえ」という言葉をある人物が発しそのまま新聞で記述する場合も、「代替え」と送り仮名を付けるので、「代替」だけなら「だいたい」しかありえないのです。
ちなみに、戦争末期や直後の毎日新聞には
「翼増産に手近な協力 出さう台所品 まだあるアルミ、ゴム これだけ飛行機を 資材は国民の生活から発掘せよ 代替品で間に合せ」(1945年2月13日)
などと「代替」の見出しが少なからず出ていました。しかし、昔の毎日新聞では送り仮名などに今ほど厳格な決まりはなかったようなので、「代替」でどう読ませていたのかは分かりません。というより、「だいがえ」が一定程度あったはずです。事実、終戦後の混乱期の1947年9月4日に「現物給与 給料と代がえ サッカリンはおろかタバコまで 流れる先はヤミ市」という見出しが出ています。

歴史の浅い熟語で読みも揺れ?
熟語としては「代替=だいたい」だったはずが、なぜ「だいがえ」というようになったのでしょう。二つの理由が考えられます。
・「代替」は「大体」などの同音異義語と紛らわしいため、発音上の区別をつけるためにあえて「だいがえ」と言うようになった。「市立」「私立」を「いちりつ」「わたくしりつ」と呼び分けるように。
・「替」の音読みは一般的にほとんど用いられず、「代替」(これ自体、口頭ではそれほど言われないはず)の他には「交替」があるが「交代」の方が伝わりやすいのであまり出番がない。一方、訓読みの「かえ」は「両替」「振替」など送り仮名なしでの使用が少なくない。その結果、「代替」を「だいがえ」と読むと誤解する人が多くなった。
おそらく、その二つの要因がからみあっているのでしょう。そもそも「代替」は明治時代の辞書「言海」にも見あたらず、日本国語大辞典の用例を見ると初出が1890(明治23)年の法律中の「代替物」。あまり歴史のない日本語のようです。だから読み方も定着しにくいのかもしれません。
中国でも伝統的に「代替」という熟語はそれほど使われていなかった可能性があります。諸橋轍次「大漢和辞典」には上下逆の「替代」が掲げられ、その意味として「代替」が書いてあるのにとどまっているのです。もしかしたら、日本で生まれた和製熟語なのでしょうか。とすると、本来の読みは「だいたい」というのも思い込みで、実は初めから両方の読み方があったのか?などと疑問は膨らみます。
将来、サンキュータツオさんの予言のように「だいがえ」オンリーになるかどうかも分かりません。毎日新聞に「代がえ」の見出しが現れて80年近くたちますが、国語辞典はいまだに「代替え」をメインの表記に打ち出すのは慎重で、大方は「だいがえ」で引くと「『だいたい』の重箱読み」などとして「だいたい」へと促されます。
また、JRA(日本中央競馬会)のホームページではかつて「代替競馬」の読みを「だいがえけいば」としていたのが「だいたいけいば」と変更された形跡があります。このような揺り戻しもあるし、当面は「代替」は「だいたい」と読むというのが大体正しいといってよいでしょう。
そもそも「代替チョコ」という表現は適切?

イオンで販売している「チョコか?」という商品
さて、ここまで書いてきてふと「代替チョコ」という書き方そのものが変ではないだろうか?と疑問が浮かびました。「チョコ代替品」ならともかく……。
「代替」を使う言葉といえば「代替地」「代替手段」「代替品」などがあります。「地」「手段」「品」いずれも、違う種類の「地」「手段」「品」に変わるだけで、「地」「手段」「品」という土台そのものは変わりません。
しかし「代替チョコ」はチョコレートとはいえません。イオンの商品、その名も「チョコか?」は表に「ひまわりの種ベースのチョコレート代替品」とあります。裏返すと、当然ながらチョコレートとは書かれず単に「菓子」となっています。

この使い方は、2010年代半ばからハンバーガーチェーンなどで使われ始めた「代替肉」から始まっているようです。それ以前は、例えば米国産の代わりにオーストラリア産の牛肉を使うという文脈で「代替肉」という言葉が用いられていました。これは肉そのものは変わりませんが、新しい使い方では肉ではなく大豆などに変わっています。
もしかしたら、これは「だいたい」か「だいがえ」かという読みの問題よりももっと根本的な日本語の変化ではないでしょうか。それとも「代替肉」とか「代替チョコ」は日本語として不適切なので校閲としては何とかすべきなのでしょうか。新たな問題を抱えてしまいました。
(2026年02月16日)
サンデー毎日に「学者芸人」サンキュータツオさんが「現代を読み解くコトバ」という連載をしていますが、2月1日号のテーマは「代替チョコ」。代替チョコはカカオが高騰しているためのチョコ風の代替品のことですが、このコラムの趣旨は「代替」の読み方です。「いずれ『代替』は『だいがえ』オンリーになるだろう」と予言しています。
「だいたいチョコなら95%くらいのチョコってことでしょ?」「こういうしょうもないことを耳で聞くだけで考えてしまう私のような者がいるので、『だいがえ』と言った方が間違いはない」とのことです。
「だいがえ」という言葉は辞書にあるのかと広辞苑を見ると「ダイタイの重箱読み」となっています。つまり「だいたい」が本来であることは間違いありません。その上でもし「だいがえ」という読みの言葉を使うなら「代替え」と送り仮名を付けることになります。つまり新聞表記としては「代替」の漢字だけなら「だいたい」しかありません。
しかしそれはあくまでも新聞のルール。それに縛られない一般の方は「代替」だけで何と読んでいるのか、気になって質問してみました。
(2026年02月02日)
