「マスクをつけて、鼻の部分を”おさえる”」という時は「押」と「抑」のどちらを使うか。「広く一般に、また、物理的な力を加える意では『押』、抑止・抑制の意では『抑』」(広辞苑)。鼻のところを手でぎゅっとやるということなので、「押さえる」がよいでしょう。
一方こちらは、恋愛したいという気持ちを「おさえてしまった」。この場合は抑制するという意味なので漢字なら「抑える」が適切でしょう。
「漢字の使い分けときあかし辞典」(円満字二郎、研究社)は押を「動かないようにする場合、なくならないようにする場合、把握する場合」、抑を「勢いを止める場合」に使うと説明しています。
「押さえる」と「抑える」は送り仮名が少し違うので、こちらも注意したいところです。
使い分け
おさえる
押〔主として物理的におさえる、確保する〕
(力ずくで)押さえ込む、押さえて動かさない、傷口を押さえる、差し押さえ、証拠を押さえる、選挙区を押さえる、手綱を押さえる、目頭を押さえる、要点を押さえる
抑〔抑圧、抑制〕
相手打線を抑え込む、怒りを抑える、インフレを抑える、抑えが利かない、抑え込み〈柔道〉、抑えの切り札、抑えの投手、10万円に抑える、新人を抑えて当選、ストライキを抑える、涙を抑える、発病を抑える、反撃を抑える、病気の流行を抑える、物価の上昇を抑える、欲望を抑える、0点に抑える