「発覚」という言葉をより広い意味で使うかについて伺いました。
目次
「病気にも」が4割超す
「発覚」という言葉、どう使いますか? |
隠していた悪事が発覚した 57.4% |
検査の結果、病気が発覚した 11.2% |
どちらの場合にも使う 31.4% |
隠していたことがバレたときに使うという人が6割近くを占めましたが、「どちらの場合にも使う」という人を含めると、4割超の人が病気にも使うと回答。使い方が拡大していることを裏付ける結果になりました。
「隠していた」ことに使うのが本筋
「発覚」は「隠していた悪事・陰謀などが人に知られること。『問題[脱税]が―する』」(明鏡国語辞典2版)。「隠していた」というのが要点で、意図的に隠したもの以外に使うのは本来の用法からは外れます。明鏡は特に注記して「隠してもいない事柄(特に吉事)に使うのは誤り。『×妊娠[婚約・誕生]が発覚』」と言います。「病気」は吉事ではありませんが、隠していたわけではありませんから「発覚」の使用には疑問符が付きます。
「隠して」いたのでなくとも、「隠れて」いた病気を見つけた場合には使ってもよいのではないか、という考え方もあるでしょうか。「発覚」の用法の広がりについては当ブログで以前にも取り上げていますが、そこでは「手元にあるどの辞典も『隠していた』と書いて、『隠れていた』と記すものはない。だから、隠そうとしていない、あるいは当人も知らなかった事柄が明るみに出ることを『発覚』というのには、かなりの困難が伴う」としています。
「病気が発覚」は増加傾向
NHK放送文化研究所のサイトでは、「検査をして病気が発覚した」という言い方について「グレーゾーン」とした上で、「検査をして病気が見つかった」と言えば済む場合が多いとしています。あえて「発覚」を使うのがふさわしいケースは限られている、と考えた方がよさそうです。ただ、同サイトでは放文研によるウェブアンケートの結果から、若い層ほど「病気が発覚」のような使い方を受け入れているというデータも示しています。
新聞でも近年、病気などに「発覚」を使う例が増えています。毎日新聞の記事データベースで、校閲の目を確実に通っている東京本紙の記事を「病気or病orがん+が発覚」というキーワードで検索すると、1990年代は5件、2000年代は12件、10年代(19年3月15日まで)は40件がヒットしました。増加傾向が見て取れます。校閲記者も「病気が発覚」に慣らされてきているかもしれません。
新聞にも責任があるかも…?
しかし検索してみて感じたのは、新聞記事にはやたらと「発覚」が出てくるということ。毎日新聞では90年以降の約30年間に、2万2000件あまりの記事で「発覚」が使われていました。全記事数が230万件ほどなので、およそ1%の記事で「発覚」が使われている計算になります。
隠していないものにも「発覚」を使うことが増えてきた背景には、事件記事の執筆で悪事や問題の「発覚」に慣れてしまった新聞記者らが、病気などにもつい「発覚」を使ってしまう、といった事情もあるのかもしれません。臆測ですが、もしかすると校閲記者にも責任がないとは言えないのかも……。まあ、反省は別の場に譲ることにしまして、皆さんにはなるべく、「発覚」は悪事が露見したときに限って使うことをお勧めします。
(2019年03月19日)
「発覚」は近ごろ使い方が広くなっていると感じられる言葉です。特に、以前は見ることの少なかった「がんが発覚」のように、病気などに使われる機会が増えているようです。
国語辞典を引くと「発覚」は「隠していた悪事・陰謀などが,人に知られること。ばれること。露顕」(集英社国語辞典3版)とあります。以前「毎日ことば」のブログで取り上げた際には、大半の辞書が「隠していた」ということを「発覚」の前提にしていることを挙げ、意図的に隠していない場合について「発覚」を使うことの難しさに言及しています。
「病気がばれる」とは言いませんし、検査するまで隠していたわけでもありませんから、やはり「病気が発覚」というのは本来はおかしな表現と言うべきでしょう。しかし毎日新聞の記事データベースでは、2000~09年には15件だった「がんが発覚」が、10~19年では85件に増えるなど、時勢の変化をうかがわせる兆候もあります。皆さんの使い方はいかがでしょうか。
(2019年02月28日)