普段は原稿を点検する側にいますが、11月4日付朝刊(東京本社版など)の特集面「校閲発 春夏秋冬」(ウェブ版はこちら)では執筆を経験しました。その中の「再思三省」欄でのエピソードを(恥を忍んで)ご紹介します。
同欄は、よくある言葉の誤りなどを三つずつ取り上げて解説するというものですが、今回の三つ目「『ム』の有無にウーム」で、当初の原稿に問題がありました。プレミアという言葉にはプレミアムの略とそうでないものがあるのでしっかり区別しましょう、ということを説明したかったのですが、書いた段階で「プレミア(premiere)ショー」と「イングランド・プレミア(premier)リーグ」のつづりが異なることを見落としていました。これはいけません。
さいわい他のページと同じように、筆者とは別に複数の校閲記者が目を通す体制をとっており、誤りは見逃されることなく紙面化の前に直せました。書き手の意識から漏れたところにミスは存在するので、他人のチェックを受けることがどうしても必要なのです。
さて掲載後、読者の方からこんな指摘も頂きました。「プレミアはプレミアムの略語ではなく、premiumの複数形premiaではないか」
研究社「新英和大辞典」第5版
確かに大きめの英和辞典を引くとpremiaの項にpremiumの複数形とあります。
小学館「日本国語大辞典」
しかし、小学館「日本国語大辞典」などの国語辞典は「プレミアムの略」と明記していますし、学研「用例でわかるカタカナ新語辞典」では「プレミア〔premium〕→プレミアム」という項があり、単数・複数の別は意味からもつづりからも意識しない扱いのようです。
学研「用例でわかるカタカナ新語辞典」
つまり、日本で外来語・カタカナ語として使われるプレミアは、英語の複数形premiaとは別物と考えられます。「外来語としては」というくくりを示さなかったために疑念を生んでしまったのかもしれません。
この小さな欄の原稿に、こんなにも反省材料が埋まっていようとは。正確で分かりやすい紙面づくりの難しさを改めて痛感した次第です。
【宮城理志】