読めますか? テーマは〈争い〉です。
目次
蝸牛角上の争い
かぎゅうかくじょうのあらそい
(正解率 84%)つまらぬ争いのこと。蝸牛はカタツムリのこと。その二つの角にある国が領土争いをして数万の死者を出したという「荘子」の話から。似た意味の「コップの中の嵐」のほうが現代ではよく使われる。
(2012年06月18日)
選択肢と回答割合
かぎゅうかくじょうのあらそい | 84% |
かごかくじょうのあらそい | 4% |
まいまいかぶりのあらそい | 12% |
一日の長
いちじつのちょう
(正解率 94%)経験や技能などが優れていること。スポーツ記事でよく使われる。「『いちにちのちょう』と読むのは誤り」と明確に示す「大辞林」のような辞書もあれば、「いちにちのちょう」を併記する「明鏡国語辞典」のような辞書もある。「いちにち」だと「一日駅長」「一日署長」みたいだが。
(2012年06月19日)
選択肢と回答割合
いちじつのちょう | 94% |
いっぴのちょう | 2% |
ひとひのおさ | 4% |
角逐
かくちく
(正解率 58%)激しく争うこと。角はここでは力を競い合う意。「逐」は元は獣を追うことを指し、競う意も生まれた。逐の字は「遂行」などの遂(すい)と紛らわしい。
(2012年06月20日)
選択肢と回答割合
かくすい | 26% |
かくちく | 58% |
かくつい | 16% |
鬩ぐ
せめぐ
(正解率 51%)たがいに恨み、相争うこと――と辞書にはあるが、今は単に好敵手や2大勢力が「争う」という意味で「せめぎ合う」と使われることが多い。小学館「新選国語辞典」では「鬩ぐ」は「〔文章語〕うらみをもって、あらそう」とするが、別の見出し語「せめぎ合う」も立て「対立して互いにはげしくあらそう」と別語のように扱う。「攻めぎ合う」は誤字。
(2012年06月21日)
選択肢と回答割合
かしぐ | 26% |
せめぐ | 51% |
ひしぐ | 23% |
彼我の差
ひがのさ
(正解率 74%)相手と自分の差。戦争やスポーツ関連で「彼我の戦力差」「彼我の実力差」などと用いられる。彼我の兵力差を顧みず始められた太平洋戦争は、沖縄で最も悲惨な地上戦となった。6月23日は沖縄慰霊の日。
(2012年06月22日)
選択肢と回答割合
かがのさ | 24% |
かわのさ | 2% |
ひがのさ | 74% |
◇結果とテーマの解説
(2012年07月01日)
この週のテーマは「争い」でした。
以前も書きましたが、間違いの選択肢を仕込むのは思いのほか苦労します。「蝸牛角上の争い」の場合はありがちな誤読例が思いつかず、ほとんど破れかぶれで「まいまいかぶり」なんて選択肢を出しました。結果的に12%の「支持」を得たのは、「蝸牛」の読みが分からなかったというより、「かぎゅう」だと単純すぎるので特殊な読み方をするのでは、と思われたのかもしれません。それにしても現在あまり使われない慣用句にしては高い正解率といえます。
「一日の長」で困ったのは「いちにちのちょう」という選択肢を出すわけにいかなかったことです。解説で挙げたのは「明鏡国語辞典」ですが、「日本国語大辞典」でも「いちにちのちょう」を見出し語に掲げています。徳富蘆花の「思出の記」などに「イチニチ」と振った用例があるとのこと。「論語」が出典の言葉ですが、それだけでは「いちじつ」が正しいと決めつけられないのでしょう。ただし大辞林などは明確に間違いと規定しているように、辞書により違いが鮮明なのが興味深いところです。
「角逐」は「逐」が「遂」と間違えやすいことは分かっていましたので引っ掛け問題を作りやすく、結果も想定の範囲内でした。ちなみに以前「完遂」を問題に出したところ正解率は58%でした。逐も遂も常用漢字ですので新聞記事などでは通常ルビは振られません。間違えて覚えてしまうとなかなか訂正する機会がないかもしれません。
「鬩ぐ」は今回最も正解率が低かった字。「争い」というテーマがヒントになると思いましたが、誤りの「傾(かし)ぐ」「拉(ひし)ぐ」とともに普段仮名書きにするので、やはり難しかったようです。難問奇問は避けたいのですが、これは「せめぎ合う」という言葉が本来の意味とずれて使われているという指摘が社内であり、面白いと思って取り上げました。ですから正解率よりも解説の方に注目していただければ幸いです。
「彼我の差」。出題者は昔なぜか「かがのさ」と思い込んでいて、辞書の「か」のところにないので「なんでないんだ。欠陥じゃないか」と思ってしまいました。今偉そうに漢字クイズなぞ出題していますが、実はその程度のレベルです。だからこそ、これからも「そうだったのか」と間違いを正すような漢字を、よくある読み誤りとともに提示していきたいと思います。