読めますか? テーマは〈友達〉です。
刎頸の友
答え
ふんけいのとも
(正解率 84%)相手のためなら自分の頸(くび)が刎(は)ねられてもいいというほど強い絆で結ばれた友のこと。「史記」が出典。「刎頸の交わり」ともいう。
(2013年03月25日)
選択肢と回答割合
てっけいのとも |
5% |
ぶっけいのとも |
11% |
ふんけいのとも |
84% |
杵臼の交わり
答え
しょきゅうのまじわり
(正解率 42%)相手の身分や貧富にとらわれない関係のこと。裕福な家の息子が、粗末な身なりで米つきをしていた雇い人の学識に感心し、米つき小屋で交友を結んだという「後漢書」の故事から。似た意味の語に「忘形(ぼうけい)の交わり」がある。
(2013年03月26日)
選択肢と回答割合
きねうすのまじわり |
19% |
ごきゅうのまじわり |
39% |
しょきゅうのまじわり |
42% |
竹馬の友
答え
ちくばのとも
(正解率 94%)幼い頃に一緒に遊んだ友達のこと。中国のある男がライバルをねたみ「子供の頃、彼は私が乗り捨てた竹馬を使っていた。彼は元から私より下の人間なのだ」と言ったという故事から。日本ではこの嫌らしさがない良好な関係の幼なじみとして使う。
(2013年03月27日)
選択肢と回答割合
たけうまのとも |
1% |
ちくばのとも |
94% |
ちくまのとも |
5% |
知音
答え
ちいん
(正解率 55%)親友を表す。中国で琴(きん)の名手の音色をよく聞き分ける者が死に、名手は嘆いて琴の弦を断ったとの故事から。単なる知人、あるいは恋人という意味もある。
(2013年03月28日)
選択肢と回答割合
肝胆相照らす
答え
かんたんあいてらす
(正解率 91%)肝は肝臓、胆は胆のうで、肝胆は心の奥底を表す。それを互いに照らすというのは、互いに心の底にしまった思いを打ち明けられる仲を表す。そんな友達がいれば幸せだ。別れと旅立ちの季節。友達は大事にしたい。
(2013年03月29日)
選択肢と回答割合
かんたんあいてらす |
91% |
かんたんそうてらす |
6% |
きもいあいてらす |
3% |
◇結果とテーマの解説
(2013年04月07日)
この週は「友達」について。年度替わりにはさまざまな友達との出会いと別れがあることからこのテーマにしました。
主婦と生活社「
成語大辞苑」が「中国文学の特徴は恋愛文学にかわる友情の文学にあるといえる」と述べるように、中国発の故事成語には友情に関するものがたくさんあります。出題した5語以外では「莫逆(ばくぎゃく、ばくげき)の友」「管鮑(かんぽう)の交わり」「断金の交わり」「金石の交わり」「金蘭(きんらん)の契り」……論語の「朋有り遠方より来たる、また楽しからずや」も有名ですね。
これに対し「
岩波ことわざ辞典」(時田昌瑞著)の索引で「友」を引いてみると▽賢い人には友がない▽友と酒は古いほどいい(西洋発のことわざらしい)▽人は善悪の友による――と、見出し語ではありませんが「類は友を呼ぶ」くらいしか見つかりません。
文学作品でも、友情を描いた日本の作品として思い浮かぶのは武者小路実篤「友情」や太宰治「走れメロス」、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」など近代以降のものばかり。古典は「源氏物語」など恋愛物が中心です。日本人はかつて友情という概念がなかったのか、それを表現するすべがなかったのか。それとも出題者が知らないだけで、本当は友情を描いた古典文学もそれなりにあるのか? 詳しい方がいらしたらご教示ください。
さて正解率ですが、「竹馬の友」が最も高くなったのは予想通り。教科書の定番「走れメロス」にも「メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである」と出てきます。これでこの言葉を教わる中学生は多いはずで、出題者もそうでした。しかしその由来となった故事は教わった記憶がありません。今回「そうだったのか!」と軽い衝撃を受け、読みとしては簡単と思いつつ出題しました。広辞苑にはこうあります。「晋書殷浩伝」より「桓温が不仲の殷浩と並び称せられることを不満に思い、幼時には殷浩は自分の捨てた竹馬で遊んでいたと、自分の優位を吹聴した故事から」。こんな人「友」とはいえませんね。なお、ここでの竹馬とは、竹の棒に飾りを付けて馬に見立て、またがって遊ぶものを指すそうです。
次に「肝胆相照らす」。昨年の衆院選で石原慎太郎さんが「橋下(徹)さんとは年代を超えて、肝胆相照らす」と演説していました。本心ですかね。少なくとも「刎頸の友」、つまりお互い首を差し出してもいいと思うほどの仲には見えません。それにしてもこの字、難しい割に皆さんよく読めているようです。
正解率の低かった「杵臼の交わり」「知音」のネタ元は「
楽しく使える故事熟語」(文春文庫)です。最も難しかった前者は「杵」の音読みが知られていないことの表れでしょう。「臼」は「キュウ」「うす」の音訓で常用漢字に追加されたのですが、「杵」は選ばれませんでした。この差は、なるべく常用漢字は音訓ともに頻度の大きいものを入れようという考えの表れと思われます。「知音」の音を「いん」と読むのは意外に思われるかもしれませんが、ちゃんと常用漢字表に掲げられています。「母音」「子音」で使いますので。
なお「知音」は日本で「恋人」の意味が生じたようです。これも日本では友情よりも恋愛重視だった精神風土の表れなのでしょうか。