円相場のように「銭」単位が問題になる場合の「150円台」という書き方について伺いました。
目次
「台」ありがやや優勢
為替相場で、1ドルが150円45~55銭ほどの場合の表し方は… |
150円台半ば 58.1% |
150円半ば 41.9% |
外国為替市場の動きを伝えるような、1円未満の「銭」単位が問題になるような場面で、150円と151円の中間ぐらいを表す際に「150円台半ば」という書き方をするのはどうか。回答は「台」を付けた書き方が6割弱を占めやや優勢でした。
「1000円台」の範囲は…
ここで見るような「台」についての辞書の説明は、あまり具体的ではありません。
年齢や値段などのおおよその範囲を表すのに用いる。「20歳台で父を失う」「1ドルが100円台になる」
(大辞泉2版)
のような感じです。「この100円台」というのも、どの範囲を指すものか考えてしまいます。ただし、大辞林(4版)だけは
数量の大体の範囲を示すのに用いる。例えば「千円台」は「一〇〇〇円から一九九九円まで」。
と、具体的な数字に踏み込んでいます。
しかし、上のような説明がなされる一方で、例えば「この店のメニューの価格帯は1000円台から1200円台だ」といった場合、「1000円台」が意味するのは「1000円から1099円」になるはずです。大辞林の説明は代表的な例を示すものではあるのですが、数字の範囲を示す「台」の意味するところは、文脈に依存している場合が多いのです。
誤解を招く余地がないか要注意
校閲センターのXを引用してのポストでは「媒体次第。為替相場が『150円台半ば』なら150円50銭前後だという前提知識が期待できるなら注釈なくやるが、そうでないなら『150円50銭前後』とするかもしれない」という趣旨のものがありました。確かに、前提がどれだけ共有されているかというのは大事なポイントです。
アンケートの結果としては「150円台半ば」を取った人のほうが優勢でしたが、これは代案として示した「150円半ば」が、あまりこなれて見えないというのも理由だろうと思います。実際のところ、新聞記事でも質問文のようなケースは「台」を付けているものが大半を占めています。
もっとも、「140円台半ば」という見た目の同じ文言であっても、その日の値動きを示す記事では「140円50銭前後」を示す一方で、より長い期間で状況を説明する記事では「145円前後」を示すということが実際にあります。誤解を招く余地がないか、よく確認する必要がある書き方であることは間違いないでしょう。
(2024年03月18日)
円安が進み、このごろは1ドルが150円を超えることも珍しくありません。そんなときに見かける「ニューヨーク外為 150円台半ば」というネットニュースの見出し。これはいったい幾らになったと受け取られるのかが気になりました。
例えばガソリンが「1リットル160円台」だといったら、「160円以上170円未満」と受け取られるでしょう。同様に考えれば円とドルの場合であっても、150円台は「150円以上160円未満」になります。しかし為替の市況はもっと細かい単位で報じられるのが普通で、これが「149円台」であれば、「149円以上150円未満」を指します。この伝でいくと「150円台」とする書き手は「150円以上151円未満」という趣旨で書いている可能性が高いでしょう。
大抵の場合、市況を伝える記事には詳細な数値が載るので、本文を読んでもらえれば誤解を招く余地はあまりないはずです。ただし見出しをつけるような場合はどうなのか。150円と少し、という話であることを伝えるためには、あえて「台」を外して「150円半ば」とする書き方もあるかと考えます。皆さんはどちらの書き方がよいと感じるでしょうか。
(2024年03月04日)