ウサギの数え方についてうかがいました。
目次
意外? 「羽(わ)」が過半数
卯(う)年にちなんでウサギの質問です。どう数えますか? |
匹 10.8% |
羽(わ) 53.3% |
「匹」でも「羽」でもよい 35.9% |
「羽(わ)」が半数以上という、ちょっと意外な結果となりました。もっとも「鳥じゃないのに羽と数える」という意外性ゆえに、多くの人が一度聞いたら忘れないのかもしれません。
ウサギの数え方の話題はインターネットでいろいろ飛び交っています。
比較的目立つのは、「小学校で匹と教えていてびっくりした」というように「羽」しかないと思っていた人。逆に「匹」しかないと信じていると思われる人が、アナウンサーが「羽」と言っていたことをからかう例もありました。いずれにせよ、正解は一つと思い込んでいる人が少なくないのでしょう。
「羽」で数えることは少なくなった
「数え方の辞典」(飯田朝子著、小学館)では、
慣習的に「羽」で数えますが、動物として数える際は「匹」が適当です。地域によってはウサギ2匹で「ひと耳」と数えることがあります。
――とありますが、「耳」は特殊例として紹介されるだけで「数え方」の欄では「匹、羽」のみが掲げられています。その上でコラム「ウサギは鳥の一種? 名前と数え方の由来の謎」が別項にあります。一部略しつつ引用しましょう。
ウサギを「1羽」「2羽」と数える由来には諸説あります。獣を口にすることができない僧侶が二本足で立つウサギを鳥類だとこじつけて食べたためだという説や、ウサギの大きく長い耳が鳥の羽に見えるためだとする説などが有力です。さらに、「さぎ」に鳥のサギ(鷺)を当てたとする俗説まであります。現代では、ウサギを「羽」で数えることは少なくなり、鳥類とウサギを「羽」でまとめて数える場合以外は、「匹」で数えます。
「現代では、ウサギを『羽』で数えることは少なくなり」とありますが、その割に今回のアンケートでは「匹」を圧倒しています。実際に使う場面はそれほどないけれど、知識としては「羽」ということを覚えている人が多いのかもしれません。
ところで皆さん、どこで「羽」という数え方を知るのでしょう。学校や本やテレビなど、いろいろあるでしょうが、もしかしたらそれらの情報源も「匹」ともいうことに言及しているかもしれません。ただ、ウサギは「羽」という情報にインパクトがありすぎ、「匹」が記憶から抜け落ちている可能性もあるのではないでしょうか。
「羽」のみが正しいわけではない
三省堂国語辞典8版の「わ」は③の意味として「ウサギを数えることば。匹」と立てた後、「由来」として「けものを食べることを避けた時代、ウサギを鳥と見なして食べたからという。江戸時代から『匹』の例もあり、必ずしも『羽』だけが伝統的ではない」と記します。「羽」のみが正しいわけではないとにおわしているように取れます。
「羽」で数えていた理由が何であれ、現在は「匹」で何の問題もありません。ツイッターでも読者から「考えてみれば、とうに『一羽二羽』と数える必要はどこにもないんだね。限られた職種の中で、かつてそう数えてた時代があった、というだけのこと」という反応がありました。
逆に「匹」が正解というわけでもありません。実際、毎日新聞のデータベースでは両方出てきます。
ではどういう使い分け?
例えばウサギを食べるリポートの記事では「羽」、アマミノクロウサギの事故死の数は「匹」で書かれています。
また「兎(うさぎ)」は冬の季語になっていて、「二羽と言ひ兎は耳を提げらるる」という殿村菟糸子の句があります。これは猟師に狩られたウサギでしょう。
中島敦「山月記」では虎に変身した男が「眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見たとたんに、自分の中の人間は忽(たちま)ち姿を消した」とあります。正岡子規も「墨汁一滴」で「一匹の親切な兎」と記しています。
以上などの例から、動物としては「匹」、食肉となってしまえば「羽」となる傾向があるといえるかも……しかし実際にはその使い分けに当てはまらない例も多いので、有意といえるような分類ではありません。そもそも「青空文庫」などで調べる限りでは「匹」の方が圧倒的に多いようで、比較するにはサンプルの差が大きすぎます。
結局、どちらがいいかと問われれば、動物(特に小型)の通例に合わせ「匹」がお勧めというしかないと思われます。しかし、何度も繰り返しますが、どちらが正解というわけではありません。
今回のアンケートは、どちらか一方が正しいと思っている人の割合を示すものとは限りませんが、もしそういう人がいれば「どちらも使える」ものと認識していただければ幸いです。
(2023年02月02日)
2023年のえとにちなんだ記事で、記者からウサギの数え方を聞かれました。毎日新聞用語集には「助数詞の基準」というページがあり、「ウサギ」は「匹、羽」となっています。新明解国語辞典で「うさぎ」を引くと「かぞえ方」として「一羽・一匹」。また大辞林の特別ベージの「助数詞」の項にも「一羽・一匹」とあります。▲だから「どちらでもよい」と答えてもよいのですが、選択を迫られる質問者が困るだけかもしれません。動物一般は「頭」か「匹」というのが一般的ですので「匹」がよいと答えました。▲ただ、誰かから聞いたり、テレビやインターネットで「羽」とする説に接したりすると、「匹」と書いてあるのは「羽」が正しいと主張する読者がいてもおかしくありません。皆さんはいかがでしょうか。
(2023年01月09日)