読めますか? テーマは〈道〉です。
目次
二河白道
にがびゃくどう
(正解率 40%)仏教語。水と火の川に挟まれた一筋の白い道。水は貪欲、火は憎悪、白い道は極楽往生を願う信仰心の象徴で、一心に念仏を唱えることで西方浄土に至ることを表す。あすまでお彼岸だ。
(2015年03月23日)
選択肢と回答割合
にかはくとう | 24% |
にがびゃくどう | 40% |
にこうびゃくどう | 36% |
隘路
あいろ
(正解率 79%)狭くて通りにくい道。比喩として、進行の妨げになるもの。東日本大震災に関し復興庁は1月に「住宅再建・復興まちづくりの隘路打開のための総合対策」を出した。
(2015年03月24日)
選択肢と回答割合
あいろ | 79% |
いつろ | 10% |
きょうろ | 11% |
葛折り
つづらおり
(正解率 74%)「九十九折り」とも書く。幾重にも曲がりくねった道。「つづら」はツル性の植物の総称で、そのようにうねうねと曲がったさまを表す。栃木県・日光の「いろは坂」は典型的なつづら折りだ。
(2015年03月25日)
選択肢と回答割合
くずおり | 17% |
かつらおり | 9% |
つづらおり | 74% |
駅路
えきろ
(正解率 37%)「うまやじ」とも読む。宿場のある街道。この「駅」は古代に整えられた、馬や宿泊施設などを備えた場所のこと。駅路の一つに北陸道があった。北陸新幹線は北陸と首都圏とを結ぶ新たな道になった。
(2015年03月26日)
選択肢と回答割合
えきじ | 49% |
えきみち | 15% |
えきろ | 37% |
隧道
ずいどう
(正解率 82%)「すいどう」とも読む。トンネルのこと。首都高速道路中央環状線が全線開通し、山手(やまて)トンネルは関越トンネルを超え日本で一番長い道路トンネルとなった。
(2015年03月27日)
選択肢と回答割合
さんどう | 5% |
ずいどう | 82% |
ついどう | 13% |
◇結果とテーマの解説
(2015年04月05日)
この週は「道」がテーマでした。
「二河白道」はお彼岸にちなんだ出題です。あまり知られていないようです。中国・唐の浄土教の僧、善導の「観経疏(かんぎょうしょ)」に出るたとえからきた熟語です。「白=ビャク」を含めすべて常用漢字表にある読みですが、なじみがないので新聞ではルビが必要でしょう。
「隘路」は常用漢字表に「隘」がないにもかかわらず、それなりに読めています。ただし、新聞に使うときは、読めない人が少なくとも2割以上いることを考えて、できるだけ「難関」など易しい言葉に言い換えるべきでしょう。ルビがあればいいと思う筆者はいるでしょうが、読みが分かっても意味が通じているとは限りません。
「葛折り」の葛は2010年に常用漢字表に入りましたが、音訓は「カツ」「くず」のみですので、新聞では「つづら」と仮名で書かなければなりません。「九十九折り」とも書きますが、これも常用漢字表の表外訓にあたりますので認められません。「新明解語源辞典」(三省堂)によると「かつては『九折』『盤折』とも書かれた。『九十九折り』と書くのは新しい。『九十九』は数の多いことを表す」とのことです。
今回最も正解率が低かったのは「駅路」でした。これは常用漢字表の範囲内で、ともに音読みすれば正解のはずなのに、皮肉な結果です。理由として考えられるのは①この語が知られていない②漢字クイズとしては「えきろ」が正解だと単純すぎると思われた③「旅路」「家路」の連想で「路=じ」のイメージが強かった④「うまやじ」が正解と思った人が選択肢にないので「えきじ」を選んだ――など。
④については実際、読者から「駅路の読みは『うまやじ』が主で『えきろ』が従だった。主たる方を選んでほしかった」という意見を頂戴しました。しかし、広辞苑など数種の国語辞典は「うまやじ」を引くと「→えきろ」となっています。逆に誘導する辞書は見当たりません。山川出版社の日本史の高校教科書でも「えきろ」とルビがついています。また、松本清張の短編「駅路」も「えきろ」です。以上のことから正解は「えきろ」を選び、解説で「『うまやじ』とも」と書きました。
なお、清張の「駅路」は4度もドラマ化されていますが出題者は未見です。清張の短編の映像化としては「天城越え」(1983年、田中裕子主演)が鮮烈な印象として刻み込まれました。リバイバル上映の「砂の器」との2本立てという至福の映画体験でした。
「天城越え」はタイトルから分かるように川端康成の「伊豆の踊子」を下敷きにしています。両作品に出てくる有名なトンネル(写真)の正式名称は「天城山隧道(あまぎさんずいどう)」です。この「隧道」、隧の字が常用漢字外で新聞などでは「トンネル」と書き換えますが、固有名詞としては別の語にはできません。ただし天城山隧道は今「旧天城トンネル」という通称の方がよく使われているかもしれません。しかし「隧道」の読みは今回最も高い正解率で意外に知られているし、古びた趣を字から醸し出せるので、正式名称は排除せず使ってほしい気がします。
――と思いましたが漢和辞典を見て前言撤回。「隧道」はもと「墓穴に通じる道」の意味があり、「道」という字は、白川静さんによると「首を手に持って行く」(「常用字解」平凡社)ことを表したそうです。更にいえば、天城山隧道は心霊スポットだそうです。言霊が怖いので「旧天城トンネル」でいいでしょう。