靴下を「はく」を漢字でどう書くかについてうかがいました。
目次
「履く」が7割占める
靴下を「はく」――漢字ではどう書きますか? |
履く 71.9% |
穿く 21.3% |
どちらでもよい 6.8% |
「履く」を選んだ人が7割、「穿く」が2割、「どちらでもよい」が1割弱という結果になりました。新聞としては、靴下は「穿く」ものとみなしているのですが、多くの人が靴と同様に「履く」ものと捉えているようです。
足を置く「履」、穴の中に入れる「穿」
日本新聞協会が発行する「新聞用語集」は、「はく」の使い分けについて
=履く[靴・げたなどを足につける]上履き、靴・草履・スリッパを履く、履き具合、履物
=(穿)→はく[ズボン・靴下などを身につける]靴下・スカート・はかまをはく
としており、「靴下をはく」の用例を載せています(「穿」は常用漢字ではないため仮名書き)。「穿」の語義に「靴下などを身につける」と明記していることからもわかるように、新聞としては、はっきりと「穿く」ものだと定義しているといえるでしょう。
円満字二郎さんの「漢字の使い分けときあかし辞典」(研究社)によると、「履」には「足をある場所に置く」という意味があり、そこから「靴やつっかけなどを足に装着する」という意味が生まれました。一方、「中国語では、袖に手を通したり、ズボンや袴(はかま)などに下半身を通したり、靴の中に足を入れたりすることを、“穴の中に体を入れる”こと」だと捉えており、そこから穴を開けるという意味の「穿」を使って「(衣服を)穿く」と表現するようになったようです。同書でも「『靴下を穿く』も、“穴に入れる”というイメージが強いので、《穿》の方が落ち着く」と書かれています。
国語辞典の見解は分かれる
とはいえ、たとえ衣類の一種だとしても、靴下は靴と同様に「足に装着するもの」だと多くの人が考えていることが今回の結果からはうかがえます。国語辞典をいくつか見てみても、広辞苑、大辞林、新明解国語辞典、現代国語例解辞典は「履く」、明鏡国語辞典、岩波国語辞典、三省堂国語辞典は「穿く」といった具合に解釈が二分しています。
同様に迷うのが「足袋をはく」の表記です。こちらは新聞各社の中でも表記が割れており、靴下と同様に「はく」とする社が多い一方、産経新聞では「足袋を履く」と定めています。屋外でも用いる地下足袋のように靴の機能を併せ持ったものも存在するため、靴下以上に「履く」意識が強いのかもしれません。
いずれも間違いとは言えず、仮名書きも選択肢
ひょっとすると、「穿く」はズボンやスカートなどに用いても、靴下に使うのは見慣れないことから、「履く」を選んだ人もいるかもしれません。今回、新聞が採用している「穿く」が予想以上に少数派となりましたが、幸い紙面上は仮名書きのため、「履く」派の人も違和感はそれほど持たないはずです。
そのため新聞のルール上は“万能”である仮名書きのままでよいのではないかと考えます。また日常生活においては、靴下を「履く/穿く」はどちらも辞書が認めている表記なので、いずれの書き方でも差し支えないでしょう。
(2021年10月15日)
靴であれば「履く」、ズボンは「穿く」。では、靴下はどちらでしょうか。靴のように足に装着するから「履く」? いや、ズボンと同じく衣類に体を通すわけだから「穿く」? そう考えると、どちらの漢字で書くべきか迷ってしまいました。▲新聞のルール上では“答え”は明確で、靴下は「穿く」ものとしています。日本新聞協会が発行する「新聞用語集」が「靴下をはく」の表記を採用しており、新聞各社もこれに倣っています。「はく」と仮名書きにしているのは「穿」が常用漢字ではないことが理由です。▲では「靴下を履く」の表記が日本語として誤りかというと、決してそうではありません。事実、国語辞典では「履く」を採用するものも多くあり、「履く」か「穿く」かで見解が真っ二つに分かれています。例えば広辞苑7版には「《履》下駄(げた)・靴・足袋・靴下などを、足先につける」との説明があります。さて、みなさんはどちらの表記の方がしっくりくるでしょうか。
(2021年09月27日)