先月、熊本で開催されたプロ野球のオールスターゲーム。九州出身の選手が躍動し、2年前の地震からの復興を後押しする夜となりました。その記事を校閲していたときのことです。
「芝生の外野席に招待された約3000人の野球少年も憧れの選手たちのプレーに目を輝かせた」
リブワーク藤崎台球場(熊本)
ふと、ペンを持つ手が止まりました。女の子は招待されていないのだろうか、と。「少年」は言葉の意味としては「年少の子供」(明鏡国語辞典)の意味もあり、国体には「少年女子」というカテゴリーもあります。しかし一般的に「少年」といえば男の子を思い浮かべる人がほとんどではないでしょうか。
調べてみると、オールスターに招待されたのは「少年野球チーム」の子供たちのようです。この「少年」は必ずしも男子だけではありません。「少年」野球チームで頑張る「少女」もいます。招待された子供たちの写真には、わずかながら女の子も見えました。
出稿元に相談すると、「『球児』なら性別は問わないだろう」。「3000人の球児も」と直りましたが、後で、「野球少年少女」とできればよかったとも思いました。少女も野球をするのだと、表記にこめることができたらよかった。
野球は「男の世界」?
熱戦が続く夏の甲子園。高校野球の世界にも女子選手はいます。練習試合は男子に交じって選手として活躍し、公式戦ではスタンドから声援を送る。試合に出られなくてもいい、野球がしたい、そんな「野球少女」の姿は、グラウンドの「野球少年」と同じように輝いています。
一方で、男子との身体能力の差を痛感し、マネジャーに転向したり、やめてしまったりする選手も。男子に交じってでも野球がしたいと入部する、その勇気はどれほどのものか想像するに余りあるのに、それが挫折につながってしまう。
また、そんな挫折を経験した後、高校野球の監督として選手を指導するようになった女性の記事も目にしたことがありますが、女性だからと対戦相手の監督から見下されたり、指導方法に悩んだり。野球はまだまだ「男の世界」のようです。
「野球少年」という判で押したような表現は、その「野球は男子がするもの」という印象を世間に植え付けている理由の一つなのでは、と思うのです。でも、「少女」だって野球が好きなんだ。
がんばれ「野球少女」
サッカーやカーリングなど、男女ともに競技があり、どちらも人気のあるスポーツは多くあります。日本の女子野球は、今月開催されるワールドカップで代表が6連覇を目指すというほどの強さ。なのにあまり認知度が上がらないのは、野球=男子というイメージもあるのではと思います。
以前京都の駅で、2010年にスタートした女子プロ野球の選手が自ら、試合の告知ビラを配っているのを見たことがあります。学生時代に整った環境で野球ができたことは少なかったはずの彼女たちですが、それでも競技を続けることを選び、収入をはじめ、恵まれた境遇とはいえない中でも向上心を失わないでいる。
わたしも野球が大好きで、子供のころはグラブを手に見よう見まねでボールを投げていたこともありました。残念ながら運動神経がないことに気づき、スポーツへの挑戦は早々に諦めてしまいましたが、だからこそ彼女たちの姿はまぶしく感じられます。
最近、アマチュア野球で活躍する女性審判員の記事を何本か読みました。昨春からは、甲子園練習に条件つきで女子マネジャーも参加できるようになるなど、野球少女の努力が少しずつ報われてきています。一足跳びに環境をがらっと変えることは難しいけれど、わたしも彼女たちを後押しするために、言葉という小さなことからはじめてみよう。
がんばれ、野球「少年少女」!
【水上由布】