「サンデー毎日」6月10日号から校閲グループによる連載「校閲至極」を始めています。今週発売分で第8回になりました。2カ月分をさかのぼりながらその一部ずつをご紹介します。
第7回「思い込みで『津田沼市』」は地名の間違いについて取り上げました。千葉県の「津田沼」は市ではありません。では「秋田県角館市」「新潟県十日市町」は? 正解はこちら(ウェブ版)をご覧ください。「有料かよ!」と思われるかもしれませんが、24時間100円で読み放題はお得と思いなおしていただければ幸いです。
第6回「歳時記読みの実物知らず」は、投句欄のゲラにあった句の一部「伸び行く二輪鉄綿花」は何の間違いだったかについて。おそらく投句はがきの手書きの文字を入力する際、ある字を間違えたものと思われます。言葉を知らなければ調べるしかありませんが、似た字の間違いはインターネットで検索してもかなりの件数がヒットするので安心できません。やはり俳句の校閲には季語の知識が必要ということになります。さて、何がどう間違っていたかというと……。
第5回「熱いテニスにホレました」はテニスの成績について。勝った試合のスコアに「6―1、7-5、10―8」とありました。これだけならよくある結果ですが、他の人は「6―3、6―4」「6―1、5-7、10―3」などとあります。「これは違うぞ!」。どこが間違っていたかというと……。
第4回「オホークツ海に『空目』注意報」はNHK文化センターでの校閲講座の報告です。例として挙げたのは「オホークツ海上にある発達した低気圧」。間違っている字を人間の目は正しく修正して疑問なく読んでしまうことがよくあります。決して漫然と読まず、スピードを落として一字一字確認することの重要性などについて述べました。さて、あなたは即座に間違いが分かりましたよね?
第3回「『甲子園○個分』…なら分かる!?」は一部で大好評の「三省堂国語辞典 阪神タイガース仕様」を枕に、よくある「東京ドーム○個分」という表現ははたしてイメージできるのかと疑問を呈しました。しかし同辞典にはタイガースファンの心を裏切る用例も……。
第2回「『首相夫人』か『首相の妻』か」では安倍昭恵さんにどういう語を付けるかについて書きました。毎日新聞では「安倍晋三首相の妻昭恵氏」などと「妻」を使っていますが、その理由は……。
安倍首相といえば、そもそも毎日新聞校閲とサンデー毎日の縁は2016年12月18日号「地味にヒドイ!官邸の日本語」から始まりました。首相官邸ホームページに「安倍普三」の誤字などさまざまな間違いがあったという記事です。(紹介はこちら)
そして第1回「河野悦子よ、なぜスルー」へと至ります。河野悦子というのはドラマ「地味にスゴイ!」の主人公。そのスペシャル版で一瞬でてきた「鐘乳洞」という誤字に誰も気づかなかったことに対し毎日新聞大阪校閲の筆者が突っ込みます。
さて、以下は余談ですが、ある観光ガイドブックには千葉県南房総市に「白浜鐘乳洞」があると書いてあります。残念ながら今は閉鎖され入れないのですが、その表示がどうなっているか、先日の海の日などの連休を利用して現地調査に行ってきました。
草に覆われそうになっている道標を発見。「土へんに童」のように見えます。しかしこれは他の字と同じく、一部がはげ落ちて偶然土へんのようになっただけのようです。
細い道を行くと奥には柵で入れなくした洞窟らしきものが。
比較的新しい説明板もありました。
これには正しく「鍾」の字が見て取れます。
そう、「鍾乳洞」はこの字が正しいのです。つまり道標にある字が元は「鐘」だったとしても間違いということになります。
近くの住民の方によると、大学生が鍾乳石を持ち出すので10年くらい前、閉鎖されたとのことです。ということは、「土へんに童」もそういう心ない人のいたずらかもしれません。手を入れるなら「鐘」を「鍾」としてくれればよかったのに――。いやいや、正しく直すにせよ勝手にやってはいけません。
連載第1回の筆者は、当事者に連絡し、誤字はいずれ修正するとの返事があったとのこと。機会があればその現地にも確認に行きたいと思っています。
【岩佐義樹】