「元年」と「2年」をまとめて書く際どうするか伺いました。
目次
回答はきれいに割れる
去年と今年、元号でまとめて書き表したらどうなりますか? |
令和1~2年 29.1% |
令和元~2年 23.2% |
令和1、2年 20.9% |
令和元、2年 26.8% |
「去年(こぞ)今年貫く棒の如(ごと)きもの」(虚子)と言いますが、去年と今年はひとまとめに扱うことも多いものです。しかし書き方はよくも割れました。3割以上を占めた回答はなく、2割を切る回答もなし。皆さん書き方はそれぞれ、ということになりそうです。
「元、2、3」とは数えないが…
「元年」というのは変則的な書き方です。言葉としては「元」に「そもそもの初め」(新潮日本語漢字辞典)という意味があり、「元年」は「年号の改まった最初の年」(日本国語大辞典2版)と説明されます。つまり「元年」は意味の上では「最初の年」=「1年目」なのですが、数として「元、2、3……」のような数え方をするわけではありません。
1月1日のことを「元日」とは言いますが「1月元~2日」のような使い方も見かけません。「元日から2日まで」か「1月1~2日」のような使い方が普通でしょう。「元年」はやはり「初めの年」を表す「語」として考えるのがよく、年を計数的に扱う場合には「1~2年」、「元年」を使うならば「元年から2年まで」のように書くのがよいのではないでしょうか。
区切りに中点を使う自治体も
もっとも「元年~2年」のように書けばさほど違和感はない、という考え方もあるかもしれません。ただし、「句読点、記号・符号活用辞典。」(小学館、2007年)の「~ 波形【なみがた】」の項目を見ると、「長さ・量・温度・百分率などの単位が付いた数字に使う場合、『1000~2000cc』のように、単位は『~』のあとの数字にだけ付けて、前の数字には付けないことが多い」とあります。単位の繰り返しはどちらかと言えば変則的な書き方ということです。
「1、2年」のように読点で区切るというのは、連続すると読みにくくなる文字を区切る際の普通の方法です。しかし、インターネットで自治体の入札資格申請の情報などを見ると「令和元・2・3年度」などと、区切りに中点を使っているところが多いようです。縦書きを基本とする新聞では、数字の区切りに中点を使うのは小数点と紛らわしいため避けるのですが、横書きでは構わないという判断なのでしょう。
どの書き方でも通用しそう
アンケートの結果では、どうした書き方がよいのか、はっきりと多数が支持するものはありませんでした。当方としては、複数年をまとめて表示するなら「元年」を避けて「1~2年」のように書くのがよいのではないかと考えますが、使用実態の裏付けは強くありません。結局、選択肢に挙げたような書き方であればいずれも差し当たり通用する、としか言いようがなさそうです。
ところで、昨年と今年をまとめて表すなら「平成31年と令和2年」になるのではないかという意見をツイッターで拝見しました。これについては、たとえば4月始まりの会計年度に関しては、国の申し合わせでは年度を通じて「令和元年度」として扱うことになっています(2019年4月2日の官房長官記者会見)。同様に後から振り返って改元の年を呼ぶ際には、新しい元号を使うことが多いのではないでしょうか。もちろん「令和元年4月」のような記述に対しては、「平成31年」に直さなければなりませんが。
(2019年01月21日)
明けましておめでとうございます。本年も「毎日ことば」のアンケートをよろしくお願い申し上げます。
さて、令和最初の年が明けました。「令和2年」となりましたが、「元年」という変則的な年を脱して少しホッとしている人もいるのではないでしょうか。書類に日付を書くときに「令和 年」という欄に「1」と書くか「元」と書くか迷う場面もあったのではないかと思いますので。
上記のようなケースについては、実務上はどちらでもよくとも習慣的に「元年」と書く人が多いと思います。しかし、今回のアンケートのように期間を表す場合はどうでしょう。
印象からいえば「元年」は「はじめの年」を意味する語であって、数量を表す書き方には向かないのではないか、期間を表すなら「令和1~2年」のような書き方がよいのではないかと感じます。あえて元年を使うならば「令和元年から2年」とするのがよいでしょうか。
また、期間が2年という場合には「~」を使うよりは読点「、」で区切る方が良いという考え方もありそうです。その場合でもやはり「1、2年」としたいところですが、いかがでしょう。
(2019年01月02日)