「一両日」という言葉は具体的にいつを示すかについて伺いました。
目次
「今日か明日」が6割占める
原稿を催促され「『一両日』中に出します……」――この言い方、いつを指しますか? |
今日か明日 59.8% |
明日かあさって 22.1% |
上のいずれかだが特定できない 16.7% |
3日先以降も含めてよい 1.5% |
「今日か明日」という回答が最多で約6割を占めました。1日延ばした「明日かあさって」は2割で、締め切りまでの余裕はあまり無いと考えなければならないようです。ただし、「いずれか特定できない」という人も6人に1人程度あることから、多少はごまかしが利くかも?
辞書なども「今日か明日」が優勢
回答から見られる解説で、国語辞典で唯一「明日かあさって」としたものとして挙げた三省堂現代新国語辞典(6版)は、用例で「一両日(あすかあさって)のうちにうかがいます」としています(下の写真右)。三省堂国語辞典(7版)の用例は「一両日中(チュウ)に〔=今日明日のうちに〕お返事します」というもの(同左)。漢字辞典の「新潮日本語漢字辞典」でも「今日明日のうち」としています。明確な根拠が示されているわけではありませんが、辞書類では「今日か明日」という見解が有力のようです。
NHK放送文化研究所による2006年のアンケートでは「あしたまで」という回答が61%で最多だったとのこと。今回のアンケートとは選択肢が異なるものの、やはり「一両日」は「今日か明日」のこととする捉え方が過半を占めています。
正確な伝達よりも、気持ちを酌んでもらう言葉か
糸井重里さん監修の「オトナ語の謎。」(新潮文庫)に「一両日中にも」という項目があります。
今日中は無理だけど、まあ、明後日くらいなら、でも、明日にもできるかもしれないし、とにかくがんばって早くするからそういう感じで待っててね、の意味を込める。
「一両日中にもご用意できるかと思います」
なのに、す~ぐ催促がくるんだよなあ。
辞書には載らない「一両日中」という言葉のニュアンスをよく伝えていると思います。なるべく早く何とかするので少々お待ちください、という感じ。期限が今日中か明日までかあさってまでか――「3日先」とは言いにくいしそこまで先に延ばしたくはないけれども、今日明日と確約はできない、というところでしょうか。ただし、「一両日中」と言う側は「あさってくらい」までを想定しても、待つ側は必ずしもそうでないということもありそうです。
あえての「一両日」だがトラブルには注意を
実際の使われ方として新聞記事を見てみると、例えば警察が事情聴取中の捜査対象者を「一両日中にも書類送検することが分かった」と書くようなケースが見られます。おそらくは取材相手の警察幹部が日付をはっきりとは言わず「一両日中には」と述べたか、あるいは記者からの「一両日中にはあるということか?」のような問いかけにうなずくなどの反応をした、ということなのでしょう。結果的には1週間後に送検されたという場合もあり、なかなか含みのある表現といいますか、やはり正確な伝達には向かない表現といえそうです。
日付を固めることによって生じる問題を回避するために「あえて」使われる表現とも言えますが、今回のアンケートやNHKの調査からみて「今日か明日」と考える人が多いという事実は踏まえる必要があると考えます。「オトナ語」として「あさってくらい」を想定して使う場合があるとしても、それ以上遅くなることがあるようなら「明日まで」を期待する多くの人との間にトラブルが生まれそう。基本的に「明日まで」、せいぜい「あさってまで」として使うのが無難です。
(2019年10月18日)
ちょっと苦笑が浮かぶようなやり取りです。「原稿まだ?」と言われてこんな答え方をする場合には、大抵ろくにできていないものだからです。
ところでその「一両日」とは。国語辞典で引いてみると、たいてい「一日または二日。一、二日」(広辞苑7版)といった説明が載っているのですが、知りたいのはそこじゃない。その「一日または二日」を常識的にはどこから数えるか、なのです。なぜといって、それが「今日、明日」を指すのか、あるいは「明日、あさって」を言うのかで、締め切りが1日違ってくるではありませんか……。
比較的刊年が新しい国語辞典を12点当たったところ、どこから数えるか示していたのは4点。うち「今日か明日」としていたものが3点(日本国語大辞典、新明解国語辞典、三省堂国語辞典)、「明日かあさって」とするものが1点(三省堂現代新国語辞典)でした。
うーん、「明日かあさって」の旗色が良くないようです。こちらの方が少し時間を稼げるのに。しかしもしかすると、わざとぼかして使われている場合もあるかもしれません。あるいは自分で言う時は「明日、あさって」として使っても、聞き手に回ると「今日、明日」として受け止めるとか。皆さんはこの「一両日」、どうお使いでしょう。
(2019年09月30日)