読めますか? テーマは〈七夕〉です。
目次
文月
ふづき
(正解率 88%)陰暦7月の異称。語源ははっきりしないが、一説に、七夕の行事として短冊に字を書いて書道の上達を願ったことから。また、稲の穂が見え始めることから「穂見月」のこととする説などもある。
(2015年07月06日)
選択肢と回答割合
あやづき | 11% |
ふづき | 88% |
ぶんげつ | 1% |
相会する
あいかいする
(正解率 68%)互いに出会うこと。「相」は接頭語。七夕の解説でよく「牽牛(けんぎゅう)星と織女星が相会する」などという言葉が使われるが、「相会する」をほとんどの国語辞典は立項していない。「日本国語大辞典」にはある。
(2015年07月07日)
選択肢と回答割合
あいかいする | 68% |
さがいする | 10% |
そうかいする | 22% |
機屋
はたや
(正解率 97%)機織りをする建物。七夕の由来の一つは中国の星にまつわる伝説だが、別の流れとして、日本古来の「棚機つ女(たなばたつめ)」の伝承がある。棚機つ女の「つ」は「の」の意味の助詞。棚機つ女は水辺の機屋で神と一夜を過ごしたという。たなばたを七夕と書くのは当て字だ。
(2015年07月08日)
選択肢と回答割合
きや | 1% |
きおく | 2% |
はたや | 97% |
天人女房
てんにんにょうぼう
(正解率 57%)昔話の類型の一つで、水浴中に男に羽衣を隠された天女がその男と結婚するが、羽衣を見つけて天に帰るというもの。のち男が天に昇って七夕伝説と合わさる話も多い。「天人」を「てんじん」と読むと「天と人」という意味の別語になる。
(2015年07月09日)
選択肢と回答割合
あまとにょうぼう | 18% |
てんじんにょうぼう | 25% |
てんにんにょうぼう | 57% |
瞿麦
なでしこ
(正解率 18%)一般的な漢字は「撫子」。柳田国男「犬飼七夕譚」にある長野県上伊那郡の昔話では、老翁が瞿麦を植えると天人が降り、その羽衣を隠し共に暮らすが、やがて羽衣を見つけた天人は天に帰る。のち青竹などを伝い天に昇った男は1年に1度だけ天人に会う。全国に類似の話が伝わり七夕伝説との混合も多い。
(2015年07月10日)
選択肢と回答割合
からすむぎ | 64% |
けし | 17% |
なでしこ | 18% |
◇結果とテーマの解説
(2015年07月19日)
この週は「七夕」でした。
by Takashi Hososhima |
最も簡単なのは「文月」と予想していましたが、「機屋」が最も正解率が高くなりました。「機=はた」は常用漢字表にある読みとはいえ、現代人はあまり使わない言葉と思っていましたが……。七夕=棚機なので、「はた」の読みの連想が働きやすかったのでしょうか。
金田一春彦著「ことばの歳時記 」(新潮文庫)は一日ごとの言葉の話題を集めた本で、7月7日のタイトルは「機(はた)を織る」です。
群馬県や長野県では「織る」はオを低くルを高くいって、はっきり「折る」と言いわける。考えてみれば、東京の人にとって、機を織るということは生活の中にはいっていない。いわば文章語だ。一方、群馬や長野では、日常生活上ごく親しいことばだ。だから正しいアクセントの伝統は、このことばに関するかぎり群馬や長野のいい方に生きているにちがいない。
同書には「文月」の語源に触れた文章もあります。
もし、この月名がタナバタと関係があるとすると、牽牛(けんぎゅう)、織女を祭る習俗は中国伝来のもので、王朝時代の人にとっては、まだ多分に異国情緒を楽しみながらの遊びだったので、「文月」という名称もハイカラな感じがしたことであろう。
しかし金田一さんは異説を紹介するのも忘れません。
大槻文彦博士は、「みな月」を水田の月と解した行き方を進めて、「ふみ月」は、稲の穂がふくらみはじめる月、「ふふみ月」の転だろうと解された。
なるほど「水無月」とは書きますが、旧暦6月は梅雨は明けていたとしても台風も来るだろうし「水が無い月」とは言いにくい。漢字は当て字だとすると、「ふみ月」も稲作との関係に着目した語源説に軍配を上げたくなりますが、結局はっきりしないようです。
「相会する」は七夕についての文献で何度か目にしたのですが「そうかい? そんな熟語あるのか」と個人的に気になっていた語です。調べた範囲では漢和辞典にもないし、「あいかいする」らしい。しかし国語辞典を何種類か見ても見つからず、日本国語大辞典(小学館)でようやく見つけました。大方の辞書が採用していないのはなぜでしょう。意味は分かるし、単に「会う」で済むから一般語としては必要ないという判断かもしれません。でも何と読むのかを確認するためだけでも、採録してほしい言葉と思いました。
「天人女房」は「てんじん」か「てんにん」かがポイントですが、「天女」は「てんじょ」ではなく「てんにょ」です。「にょ」が「にん」になったという覚え方もあるかもしれません。
柳田国男「犬飼七夕譚」(講談社学術文庫「年中行事覚書 」所収)に天人を呼び寄せる花として出てくるのが「瞿麦」。これは難読です。果たして今回最も正解率が低くなりました。加納喜光著「植物の漢字語源辞典」によると、日本でいうヤマトナデシコは中国で薬用とする瞿麦の変種。瞿麦に麦の字があるのは「実が麦に似ているから」といいます。サッカー女子のなでしこは大和撫子というよりは、踏まれても成長する麦に近いかもしれません。