「カスハラ」という言葉を知っているかについて伺いました。
目次
「聞いたこともない」が大半
「カスハラ」という言葉、ご存じですか? |
分かる 11.1% |
分からないが聞いたことはある 11.7% |
聞いたこともない 77.2% |
「聞いたこともない」という人が4分の3超と大半を占めました。川柳欄に載った「カスハラ」の意味も、分からない人が多かったかもしれません。かといって川柳に説明をつけるわけにもゆかず、難しいところです。
「カスタマーハラスメント」の略
「カスハラ」は「カスタマーハラスメント」の略。「カスタマー」は顧客のことで、悪質なクレームや暴言といった、お客から店などへの嫌がらせや迷惑行為などを指します。
昨年3月、厚生労働省の有識者会議が、職場のパワーハラスメント対策に関する報告書で「顧客や取引先からの著しい迷惑行為」について啓発するため「『カスタマーハラスメント』や『クレーマーハラスメント』など特定の名前やその内容を浸透させることが有効」ではないかとしています。おそらくはこの前後から「カスタマーハラスメント」という呼び方が見られるようになり、セクハラやパワハラと同様に略した「カスハラ」も用いられるようになってきたのでしょう。
毎日新聞でも昨年の秋以降取り上げられるようになりました。ある労働組合のアンケートでは、対象5万人のうち600人がカスハラのせいで精神疾患になったとのこと。こうなると、もはや「お客様は神様」とは言えそうにありません。「神様が悪魔に変わる」という川柳も、げにもっとも。ただし、今回のアンケートの結果を踏まえると「カスハラ」の認知度はまだまだ低く、当面は説明付きで使用することが望ましいと考えます。
平成で増えた「○○ハラ」
「終わハラ」「エーハラ」「アカハラ」「アルハラ」「スメハラ」「セクハラ」「ソーハラ」「ドクハラ」「パタハラ」「マタハラ」「モラハラ」「ロケハラ」――辞書サイト「ジャパンナレッジ」のデジタル大辞泉に載っていた「○○ハラ」という略語を並べてみました。「カスハラ」がこれに加わる日も近いかも。ちなみに「エーハラ」は「エージングハラスメント」の略で「年齢を理由とした嫌がらせ」のこと。「ソーハラ」は「ソーシャルメディアハラスメント」、すなわち「ソーシャルメディアを通じて行われるいやがらせ」です。
聞いたことも見たこともなかったのは「ロケハラ」。「ロケーションハラスメント」の略だそうで「携帯電話やスマートホンなどの位置情報サービスを悪用し、特定の利用者の居場所を監視したり、プライバシーを侵害したりすること」。どうも普通に考えれば「やってはいけない」ことばかりが並びますが、それをやる人がいるから「○○ハラ」という略語がどんどん増えてきたのでしょう。
回答から見られる解説にも書きましたが、毎日新聞で初めて「ハラスメント」の言葉が使われたのは1989(平成元)年、日本初のセクハラ訴訟の記事においてでした。平成の30年余。この間に社会の常識が変化してハラスメントと受け取られるものが増えた面もあるでしょうし、社会に余裕がなくなって各人の攻撃性が高まっているということもあるかもしれません。次の時代はもう少し和やかな世の中になってほしいと心から願います。
(2019年04月12日)
毎日新聞の「万能川柳」欄に「神様が悪魔に変わるカスハラで」(東京・のりボー)という句が載りました。「カスハラ」も川柳に詠まれるほど一般的になったのか、と思う一方で、やっぱり「カスハラってなんだ?」と思う人が多かったらどうしよう、と気になる部分もありました。
「セクハラ」に始まって「パワハラ」「マタハラ」「アカハラ」「オワハラ」などなど、「ハラ」の付く語はいろいろありますが「カスハラ」もその一つ。「カスタマーハラスメント」の略語です。「客や取引先(カスタマー)の過剰で悪質なクレームによる企業の従業員へのハラスメント(いやがらせ)」(2019年1月11日付毎日新聞「質問なるほドリ」)を意味します。
お客様は神様です、とは三波春夫の名文句ですが、当今ではいつ悪魔に変わるか分からない――そんな不安感がにじむ句です。毎日新聞の記事データベースで確認できる「ハラスメント」の初出は1989年8月。日本最初のセクハラ訴訟の記事ですが、平成の30年はハラスメントの30年でもあったようです。もっとも、そうした問題が表に出るようになった分だけ、少しは世の中良くなったとも言えるのでしょうか。
(2019年03月25日)