先日、原稿に「1月5日ごろの小寒(しょうかん)から2月4日ごろの立春までが、寒さが最も厳しい」との表現がありました。「大寒(だいかん)」が一年で最も寒い時期だと書いてあるのをどこかで見たことがあったため、はじめこれでは不正確なのではと感じました。結果的には、決して誤りとは言えないのですが、調べると「寒さ」にもいろいろとあることがわかりました。
小寒や大寒は、春夏秋冬の四季を六つに分けた二十四節気(にじゅうしせっき)の一つ。特定の一日を指すこともあれば、一定の期間を指すこともあります。つまり、「大寒」と言えば一年で最も寒いとされる日(1月20日ごろ)を指したり、その日から暦上の春の始まりとされる「立春」の日までの15日間ほどを指したりもします。
辞書などによると、やはり「大寒」が一年で最も寒い時期とされていますが、そもそも「寒(かん)」という漢字自体に「一年で最も寒い時期の呼び名」との意味がありました。「小寒」は「寒の入り」という意味で、最も寒い時期に入るころを指します。「小寒」から「立春」までを「寒の内(うち)」や「寒中」と言うので、幅を持たせれば冒頭の表現も間違いではありません。「大寒」が文字通り、「寒」の中でも特に厳しい寒さであるのは確かですが。
ところで、二十四節気の下には、これをさらに三つに分けた七十二候(しちじゅうにこう)という5日間ほどの単位が存在します。中国で考案されたものですが、日本にもたらされてからは気候風土に合わせて改定がなされ、日本の季節感に即した内容になっています。一年をわざわざ5日ほどの単位に分けて名前を付けたことを考えると、昔の人はそれほどに季節の移ろいを肌で感じ、季節感を大事にした暮らしをしてきたのだなと思われます。それぞれの候を解説した「日本の七十二候を楽しむ」という本が最近人気だそうですが、そうした日本人の心を改めて見直そうといった動きなのでしょう。
「大寒」の内訳は、初候が「款冬華(ふきのはなさく=ふきのとうがつぼみを出す)」、末候が「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく=ニワトリが卵を産み始める)」と、なんとなく春を思わせます。春はもうすぐそこかと期待しますが、真ん中の次候はといえば、「水沢腹堅(さわみずこおりつめる=沢に氷が厚く張りつめる)」。まだまだ厳しい寒さは続きそうです。
【松風美香】