ラグビー・ワールドカップは本日、日本代表が決勝トーナメント進出をかけてアルゼンチン代表と戦います。テレビで応援するにわかファンも多いでしょう。ルールや用語が全く分からない人のための超簡単ガイドを、チームの愛称の裏話とともにお送りします。
ラグビー・ワールドカップは本日、日本代表が決勝トーナメント進出をかけてアルゼンチン代表と戦います。テレビで応援するにわかファンも多いでしょう。しかしルールや用語を知らないと何が起こっているのかさえよく分からないのではないでしょうか。かつての校閲部内報に今は退職されたラグビーファンの部員が記した「ラグビー超簡単ガイド」を編集し直してお送りします。
目次
基礎中の基礎
誰もが知っているのは「前にパスできない」ということですね。アメリカンフットボールでは一回は前にパスができ、それが大逆転を招くというドラマがあるわけですが、ラグビーでは前に向かってボールを落とすこともノックオンという反則になってしまいますし、投げることもこれまたスローフォワードという反則が待っていますから、なかなか大変な「自己規制」をしています。前に進むためには主に自分で持って走るか、キックを用いるか、です。
倒れたらボールを放す
自分で持って走れば、相手方が黙って見ているはずはなく、強力なタックルが待っています。もし倒されたらパスするかボールを手放さなければいけませんし、速やかに立ち上がりボールから離れなければなりません。「タックルされてもボールを放しませんでした」というと勇敢な行為のようですが、ノット・リリース・ザ・ボールという反則を取られてしまいます。ボールが敵方に渡るのですから、攻撃の先頭を切っていたはずが相手にチャンスを与えてしまうこともあるわけです。しかし、敵の守備網を切り裂くような快走はラグビー場が盛り上がる、いわば華のあるプレーであることは間違いありません。
前が守り後ろが攻める?
メンバーは15人。フォワード(FW)とバックスに分かれます。バックスは、スクラムハーフ(SH)とスタンドオフ(SO)によるハーフバック(HB、2人)、ウイング(WTB、2人)とセンター(CTB、2人)によるスリークオーターバック(TB)、さらにその後ろに位置するフルバック(FB)の7人。サッカーの場合、自分のゴールにより近い位置にいる選手の主たる任務が守備であるのに対し、ラグビーの場合は重要な得点源でもあります。逆にフォワードと呼ばれながら大きな役割が守備だというと奇異に感じる人もいることでしょう。
最もラグビーらしいスクラム
ラグビーはなんだかゴチャゴチャ人が集まっている時間が多くて何が起こっているかよく分からないという声をまれに聞きますが、ノックオンなどの軽い反則が起きた地点でプレーを再スタートさせるためのスクラムは、もっともラグビーらしいプレーだと思います。ほとんどの場合8人のフォワード(プロップ2人、フッカー、ロック2人、フランカー2人、NO8)によって組まれます。スクラムハーフ(SH)がボールを投げ入れ、スクラムの後方でボールを取り、やや後方に位置するスタンドオフ(SO)にパスするというのがオーソドックスなパターンです。SOは「司令塔」と表現されることが多い攻撃の起点です。
何点入った?
ラグビー記事の校閲で必須なのがスコアの計算ですが、「えーと、Pって何? 何点?」などと初心者がいちいち調べていてはすぐ締め切り時間が来てしまいます。そこで毎日新聞用語集の「運動用語」のページでは、ラグビーの用語集とともに「ラグビースコアの見方」のコーナーがあります。
トライ(T)を取れば5点入ります。さらに、その地点の延長線上の好きなところからゴール(G)を狙えます(2点)。スコアのPとはペナルティーゴール(PG)のこと。ペナルティーが与えられる、と聞くと反則を犯した人に対してのように感じるかもしれませんが、しばしばペナルティーキックをける権利を得た方へのことを指していることがあります。ゴールを狙うと宣言して入れば3点が与えられます。Dというのはドロップゴール(DG)。連続しているプレーの中で真下に1回バウンドさせたボールをゴールに向けてけり成功すれば3点です。ちょっと奇襲作戦的なところがあります。今回のワールドカップでは1次リーグで日本と同じ組のイングランドがアルゼンチン戦で三つのDGを決めました。
オールブラックスは誤植から生まれた?
では、基本ガイドはこれくらいにして、日本とアルゼンチンの試合に注目しましょう―――とまとめようとしましたが、ちょっとこぼれ話を。ラグビーのアルゼンチン代表は愛称が「ロス・プーマス」なのですが、これはネコ科のピューマ(写真下)のこと。ところがエンブレムに描かれているのは同じネコ科でもジャガー(写真上)。何でも、アフリカ遠征の時、現地メディアが間違えたのが定着したのだとか。
そして試合前の舞「ハカ」が有名なニュージーランド代表の「オールブラックス」。この名は文字通り黒いユニホームからという説の他に、誤植から生まれたという説もあるそうです。毎日小学生新聞9月16日「15歳のニュース」によると、
1905年、ニュージーランド(NZ)代表チームが初めて欧州で国際試合に挑んだ時、チーム全員がバックス(パスをつないで点を入れるポジション)のような、巧みなパスを見せたことから、現地の新聞記者に「全員がバックス=オールバックス(All Backs)」と呼ばれた。ところが、印刷のミスで「オールブラックス(All Blacks)」になり、ニックネームとして定着したという説がある。
とのことです。真偽の程はともかく、「全員がバックス」と思われるような華麗なパス回しを日本代表にも期待したいですね。
最後に宣伝です。毎日新聞用語集にはラグビーなどさまざまなスポーツの用語の解説も満載です。有料会員登録でご覧になれます。観戦のお供にいかがでしょう。