読めますか? テーマは〈夜〉です。
目次
夜を日に継ぐ
よをひにつぐ
(正解率 76%)昼夜の区別なく行うこと。孟子の「夜をもって日に継ぐ」という言葉に由来する。昼の時間に夜の時間を継ぎ足すということなので「日を夜に継ぐ」は誤り。
(2015年10月05日)
選択肢と回答割合
やをにちにつぐ | 7% |
よるをひにつぐ | 16% |
よをひにつぐ | 76% |
小夜曲
さよきょく
(正解率 59%)セレナーデ、つまり、恋人のいる部屋の窓のそばなどで歌って聞かせる甘い歌や、軽快な歌曲・器楽曲。
(2015年10月06日)
選択肢と回答割合
こやきょく | 3% |
さよきょく | 59% |
しょうやきょく | 37% |
夜気
やき
(正解率 68%)夜の冷たい空気。または夜の気配のこと。また、曇りなく静かな心という意味も。しんしんと夜気を感じる頃は、冷静に考え事をしたり読書をしたりするのに適している。
(2015年10月07日)
選択肢と回答割合
やき | 68% |
よぎ | 29% |
よるぎ | 2% |
虫時雨
むししぐれ
(正解率 94%)たくさんの虫が一斉に鳴くことを時雨の音になぞらえた言葉。時雨は冬の季語だが、虫時雨は秋の季語。虫たちの夜の合唱がまばらになったころ、本当の時雨が降る。
(2015年10月08日)
選択肢と回答割合
ちゅうじう | 4% |
むしどきあめ | 2% |
むししぐれ | 94% |
夜鶴
やかく
(正解率 44%)夜、巣ごもりしている鶴。親の愛情が深いことのたとえとして用いる。中国の白楽天(白居易)の詩に出てくる「夜鶴子を憶(おも)い」から。なお同音の「野鶴」は仕官しない民間人を表す。
(2015年10月09日)
選択肢と回答割合
やかく | 44% |
やづる | 29% |
よかく | 27% |
◇結果とテーマの解説
(2015年10月18日)
この週は「夜」ですが、まずはおわびいたします。
「小夜曲」の間違いの選択肢として「しょうやきょく」を入れていましたが、「さよきょく」とともにそれも採用する辞書が少なくないので不適切でした。
改めて、職場で確認できる最新版の辞書10種と百科事典、音楽事典で、「さよきょく」「しょうやきょく」の項を引いてみました。○は「空見出し」(「→セレナーデ」と誘導するもの)も含め見出し語として採録しているもの、×がそうでないもの、△は見出し語としては掲げていないものの「セレナーデ」の語釈の中で「さよきょく」と示してあるものです。
さよきょく | しょうやきょく | |
広辞苑 | ○ | × |
大辞林 | ○ | ○ |
大辞泉 | ○ | ○ |
岩波国語 | ○ | × |
三省堂国語 | ○ | ○ |
新明解 | ○ | × |
新選 | △ | ○ |
集英社 | ○ | × |
明鏡 | ○ | × |
日本国語大辞典 | ○ | ○ |
日本大百科全書 | △ | × |
新訂標準音楽辞典 | △ | × |
この中で「明鏡国語辞典」(大修館書店)だけは「『しょうやきょく』は誤読」と明記しています。それに加え、音楽専門の事典と百科事典が「さよきょく」と記していることを「さよきょく」を正解にした根拠にすることはできます。しかしこうして辞書の採用状況をみると「しょうやきょく」が間違いとするのも無理があると思われます。少なくとも漢字クイズとしては別の誤りの選択肢を用意すべきでした。
今回最も正解率が低くなった「夜鶴」の例でいうと、当初「よづる」も選択肢に入れていましたが、「日本国語大辞典」(小学館)にその読みが記されていたので外した経緯がありました。しかし「小夜曲」に関してはなぜかそのチェックが働きませんでした。申し訳ありません。
さて「夜を日に継ぐ」は毎日新聞用語集の「誤りやすい表現・慣用語句」のページに「日を夜に継いで→夜を日に継いで、日に夜を継いで」と載せています。
「夜気」の解説で「曇りない静かな心」という意味を加えたのは広辞苑からですが、その出典は「孟子」。岩波文庫(下、巻第十一)の注と訳によれば「夜間外物に煩わされない清らかな気」「晴明の気」とあります。後の「晴明」は「清明」の方が適切ではないでしょうか。
「虫時雨」は「日本人が大切にしてきた季節の言葉 」(復本一郎著、青春出版社)で出合った言葉。比較的新しい季語だそうですが、日本人の感性にしっとり寄り添う、美しい言葉です。書名の通り、大切にしたいものです。