「得点を与える」という表現について伺いました。
目次
「違和感なし」は2割台にとどまる
相手に「得点を与える」――この言い方、どうですか? |
違和感はない 23.8% |
違和感はあるが許容範囲 42.7% |
違和感がある。「点を与える」などとしたい 33.5% |
最多は「許容範囲」との回答でしたが、違和感があるか否かというくくり方では「ある」とした人が7割を超えました。ツイッターでは読者の方から「『失点を与える』とか?」などの案もいただきました。
「得点」と「与える」は動作が重複
「得点」「失点」について詳しく見てみましょう。「得点」は「競技・試験などで、点数を得ること。また、その点数」(明鏡国語辞典第3版)。「失点」は「競技・勝負などで、点数を失うこと。また失った点数」(同)。いずれもその語だけで、自身から見て点がどうなったかを簡潔に表しています。
また「与える」は、自分のものを相手に差し出す行為です。「点を与える」ならばシンプルな構図ですが、一語で動作まで完結する「得点」「失点」のいずれも、「与える」にはつながりにくいことがわかります。
2者の対戦に関するスポーツ記事では「どちらの視点からの話か」を誰が読んでもわかるようにしなければいけません。過去記事では「言葉足らず」で読み違えが起こりそうになった例に触れましたが、今回のケースでは、どちらの視点からの話かまでは誤読されないにしても、ひっかかりを覚える人は多いということがわかりました。
チェックの際は「視点」に注意を
さて今回の件、どう直すのがよいでしょうか。出題時のコメントで「点を与える」がよいだろうかと書きました。これはスポーツ記事でよく出てくる「点を献上する」に近い用法と言えそうです。「点を献上する」はやや皮肉めいた表現だと個人的には思っていますが、「与える」もそれに近いものがあるでしょうか。他に「得点を許す」も素直でよさそうです。
スポーツ記事の校閲は「視点」を大切にすべきだと常々思います。選手から見た左右を確認するためにフィールドに立った気持ちになってみたり、バッターボックスに立った気持ちになってみたり……。スポーツ経験の乏しい出題者ですが、想像力だけは失わないよう、磨き続けていきたいと思います。
(2022年01月11日)
「得点」にからむ表現はスポーツ記事で多く見られます。「得点」は「競技・試験などで、点数を得ること。また、その点数」(明鏡国語辞典第3版)。「得点を得る」「得点を取る」などは「点を~」で十分に伝わるため、「得」を削除することで重言感を解消できます。▲では逆に、取られる場合はどうでしょう。「得点を与える」というのは相手に点を奪われることを表していますが、先に挙げた2例と同じく「点を与える」でも意味は伝わります。しかし、相手の「得点」という行為を強調したいがゆえの表現なのか?と考えると、単純に「得」を削除してよいものか迷ってしまいます。▲出題者は毎回悩み、結局削除してしまうのですが、毎日新聞の記事データベースによると、過去には100件ほど登場しています。人によって感じ方が違う表現かもしれません。みなさんは、どう感じたでしょうか。
(2021年12月20日)